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2017年10月5日木曜日

質実剛健なエーハイムメック

ろ材レビュー(エーハイムメック編)

(2024/8/20 修正)

今回は、エーハイムの物理セラミックろ材であるメックについて。

リングろ材の中ではかなりの知名度がありますが、導入を検討している方、そもそもメックを知らない方向けに話を進めていきたいと思います。

軽くネタバレとなりますが……

・生物、物理ろ過のバランスが取れ、
・安価かつ壊れづらく、
・とても使いやすいろ材。

そのようにわたしは評価しています。

それでは本文へと入っていきます。
なお、当記事で紹介する物品は全て自費で購入したものです。



今回のレビューについて


レビューの前に

さて、是非とも知っておいて欲しい話なのですが……

エーハイムメックほど時代によって、アクアリストからの評価が変化するろ材はありません。

幾分わたしの考えと当時の流行が含まれています。以上を読み進めていただければ幸いです。



時代が変われば評価も変わる

わたしが手に入れた当時(15年以上前)は、ろ材に対する全体的な風潮として、物理ろ過よりも生物ろ過を優遇する傾向があり、セラミックであるなら多孔質であるべきだ、という考え方が圧倒的な多数派でありました。

つまるところ、多孔質ではない物理ろ材であるメックは、同社サブストラットより軽んじられる傾向があったのです。
もしかしたら、当時はネットに入り浸りでしたので、そのような偏った思考をいつの間にか吹き込まれてしまったのかもしれません。
どちらにせよ、わたし自身セラミックブーム(?)に飲み込まれたことは間違いありません。

サブストラットさえあればいい。
メックは付け合わせ。

凝り固まった考え方に染まりきっていました。

では、なぜそんなに好きでもないメックを手にしたのか?

それは、エーハイム2222に純正ろ材として同梱されていたからです。同社フィルターにらしからぬ直方体のフィルターケースは、当時賛否両論となっていました。
わたしはというと、スッキリとしたデザインに惚れ込み、高嶺の花を財布をたたいて購入したのでした。

そのため、当時は「おまけでついてきた」ぐらいにしか思っていませんでした。
しかし、このメックですがアクア歴が長くなればなるほど、その素晴らしさが身に染みてわかるようになるのです。



使えば使うほどわかる実用性

文中でメックを「付け合わせ的存在」と表現しました。
しかし、現在のわたしの中での評価は180°違います。

後述しますが……

物理ろ過も生物ろ過もこなし、
目詰まりしづらく、
メンテナンス性もよく、
廉価で壊れづらい。

実用性抜群です!

ここからはわたしの持論なのですが、ろ材は表面積がすべてではありません。耐久性や使い勝手、手に入れやすさ、水質への影響、目詰まりのしやすさ、etc、etc……
使ってみないと分からないことだらけ。メックは、”スペック優先主義”の問題点に気づかせてくれるろ材の1つなのです。

話は徐々にレビューの様相を呈してきましたから、まずは優れている点から述べていきたいと思います。

エーハイムメック



エーハイムメックのここが良い!


良い点その1:物理ろ過能力が高く、掃除もしやすい

その構造でもっとも特徴的なのは、ほどよく小さいということです。

ろ材コンテナに敷き詰めたときの目は細かく、しっかりと大きなゴミを絡めとります。
素性はリングろ材ですから、なかなか目詰まりはせず通水性は良好、かつ物理ろ過能力はかなりのものです。

そのように書くと良くある生物ろ過もできるリングろ材かと思われがちですが、その疑問を根底からひっくり返す大きな特徴があります。

多孔質ではありません。

当然、バクテリアの食いつきがゆるく、清掃するためにろ材ケースごと揺するとサラリと汚れが外れます。これこそ物理ろ材だと言われるゆえんなのかもしれませんが、言い換えればコロニーが過剰に繁殖せず、詰まりづらいともいえます。

とはいえ、プラスチックろ材のようにつるっと外れて新品同様になるというような外れ方はせず、ほどよくバクテリアが残ります。

掃除加減が難しですが、物理ろ材として利用しながら生物ろ過も期待する、そんなことができるろ材だといえるでしょう。

なお、わたしとしては、メックのみで生物ろ過を担わせることはお勧めしません。
ろ材は組み合わせです。生物ろ過には生物ろ材、物理ろ過には物理ろ材を利用するべきです。

と言いますのは……(次パートに続く)



良い点その1【補足】:目詰まりしないことは良いことなのか?

さて、この記事を書いた当時、「目詰まりしづらい」ことは、セラミックろ材に求められる1つの要素である。そういったニュアンスで、記しました。
しかし、幾ばくかの年月がたち、ろ材に対する考え方も変わりましたので、補足を述べていきたいと思います。

記事の途中に文章を差し込んでいる都合上、それほど尺が取れずいきなり本題に入るのですが、目詰まりしないろ材というのは、裏を返せば、ゴミを素通りさせているとも言えます。
とりわけ、物理ろ材のみでろ過システムを構成してしまうと、経路が長大なものならまだしも外部フィルターのように短い場合では、パワーヘッド直前まで小さなゴミが濾しとられないことが重々考えらます。

その小さなゴミはどこへいくか?
全てウールマットに濾し取られることになります。

確かにセラミックろ材では目詰まりが起きにくくなりますが、今度はウールがダメになりやすくなります。

そもそも、生体の数や餌の量が一定なら、水槽内で生まれるゴミの量も変わりません。ろ材だけ目詰まりしづらいものに変更しても、結局は負荷が別の場所にかかるだけなのです。

もちろん、悪いことばかりではありません。ウールマット自体は使い捨てのろ材ですから、交換すればまたたくまにろ過性能が元に戻ります。
「使い捨て可能」な部分に汚れを集中させ、他のろ材は汚れづらくさせる効果があります。結果的にそれらをフリフリと洗浄する機会は減るでしょうから、ある意味メンテナンス性は向上するとも考えられます。

しかし、ウールマットがより早く汚れるので、外部フィルターのフタを開ける頻度は増加し、費用もかさむことになります。それはそれで問題です。

やはり、外部フィルターにおいて、ろ材は組み合わせてこそのものです。

粗目・中目・細目とセラミックろ材やスポンジろ材をバランスよく配置し、全体でゴミをろ過すると、目詰まりしづらくなり、メンテナンスの回数が減少するようになります。
良いことずくめではありませんか?

「絶対」とは言えない微妙なラインの話ですが、1つの考え方として知っておけば、ろ材選びで悩むことも少なくなるでしょう。



良い点その2:十分な生物ろ過能力がある

生物ろ過能力が良いといっても、それは水槽にとって十分な性能という意味です。
一瞬でアンモニア濃度0mg/Lとか、脱窒で硝酸濃度0mg/Lとか、そんな飛躍した話ではありません。

たしかに、多孔質でないことを考慮すれば、バクテリアの定着を有利とはいえません。
しかし、昨今のプラスチックろ材の普及で、表面が平滑な素材でも有機的な凹凸に加工さえされていれば、生物ろ過もこなせると判明しつつある今日この頃。
定着のしやすさのみでろ材性能を語るのは、少々無理があります。
現実として、ろ材に硝化細菌が繁殖「さえ」すれば、生物ろ過を担うろ材として十分に機能するはずです。

とはいえ、それは言い換えれば掃除のしやすさ。プラスチックろ材に代表されるように手加減なしでザブザブ揺すり洗いすれば、ベローンとゴミが剥がれ落ち綺麗さっぱりできます。もともと、本来物理ろ過を主眼とし設計されているゆえの特徴でしょう。

となれば、生物ろ過を担わせるときには、洗浄のさじ加減にご注意を。
そのような人為的な影響もあるため、長期的な目線で考えれば、生物ろ過専用のサブストラットやシポラックスほど安定しないのも確かなところです。これ単体で利用するは厳しいと言えるでしょう。

しかし、複数のろ材と併用しさえすればどうでしょうか。通水性が高く物理ろ過と「ある程度」の生物ろ過もできるマルチプレイヤーとして活躍してくれるはずです。



良い点その3:セラミックろ材の中では安い

読んで字のごとくです。

1Lあたりの価格が、かなりお安くなっています。
上部・外部・オーバーフローなどのフィルターケースが大きいろ過装置や追加ろ材としておすすめです。

今しがたネットで調べてみたところ……

・エーハイム メック(パッケなし:1L) → ¥1,050
・エーハイム バイオメック → ¥2,211
・エーハイム サブストラットプロ → ¥1,680
・シポラックス(1L) → ¥3,083

(2024/8/20時点)

そんなわけですから、千円前後と大変お求めになりやすい価格となっています。
昔は高嶺の花でしたが、最近はサブストラットプロともどもお求めやすくなっているようですね。



良い点その4:入手しやすい

最近はプラスチック物理ろ材に押されつつあり、セラミックでできた物は意外に選択肢が少なくなっています。

そういった稀有なポジションであるので、実店舗でも取り扱っていることが多く、サブストラットプロの隣に置いてあることがよくあります。
もちろん、amazonでも、チャームでも、ヨドバシでも販売されており、大変入手性がよいろ材と言えます。

入手性? 何をいまさら……、と言いたくなる人もいるでしょうが、アクアリウムは意外にマイナーな趣味。通信販売が拡充する以前は商品の入手に四苦八苦することが良くあったのです。
シポラックスの記事でも書いたことですが、昔は希少なろ材を求め、大都市でショップ巡りをすることが良くありました。1日つぶして次から次へと店を回った方が効率よくアイテムを捜索できたからです。

が、交通費を含め人間が1日過ごすのに何かとお金が掛かり、後でレシートを集めてみたらろ材が購入できるほどの金額だったことも。

アクアリウムが趣味?
それとも、アクアリウムショップ巡りが趣味?
そんな本末転倒なことも良くあったのです。

(え? 両方だって? 素晴らしい!)

通販が充実した現代においては発生しづらくなっていますが、二回りほど昔は良く悩まされた懸案事項であったのです。
そのような経験をしたからこそ、声を大にして言いたいのです。

入手性は超大切!



良い点その5:耐久性がめちゃくちゃある

最後は耐久性について。
散々多孔質でないと述べてきたメックですが、それゆえ空気の層を含まず恐ろしく堅牢なろ材です。

製品パッケージの中に稀に割れているものが入っていますが、どうやって割れたか不思議なぐらいです。
試しに素手で叩いたり素足で踏んでみましたが、一向に割れる気配がありませんでした。
セラミックろ材の中で欠けた! 割れた! 砕けた! といったことがほとんどないろ材となっています。

具体的には、おおむね10年利用しているのですが、どうやったら壊れるのか? と疑問に思うほどにろ材清掃時に破損したものが見つかりません。
おそらく、新品のパッケージの底を探した方が見つかりやすいだろうと、自分の中で変な推測までし始めてしまう始末。

サブストラットもそうですが、エーハイムのろ材は本当に一生モノだと言えます。

最後に今まで述べた良い点をまとめると……

生物ろ材としても、物理ろ材としても使え……、
目が詰まりにくく……、
どこでも売っていて……、
さらに廉価で……、
耐久性がある。

そんな、

質実剛健なろ材です。

また、安くて長期間利用できるろ材です。
コストパフォーマンス良好だと言えるでしょう。



エーハイムメックのサイズ・形状(補足)

ここではメックの形状について述べていきたいと思います。

大小を問われれば、比較的小さいろ材に含まれると言うことができます。

実際にろ材として利用すると、目の細かさとリング形状により、通水性、物理ろ過性、そしてほどほどの生物ろ過性能を兼ね備えているということは、今まで話をした通りです。

では、どれぐらいのサイズなのか? ということを写真で紹介したいと思います。
まず、リングを円柱に見立てて、円を描いているその上面もしくは下面は……

定規の横に10個並べて10cm。

ですから、直径は約1cmということになります。

エーハイムメックを10個並べて定規で長さを測定(上面)

次いで、側面を調べてみましょう。

今度は9個並べて10cmでしたから、1つ1.1111...cmということになりますね。

エーハイムメックを10個並べて定規で長さを測定(側面)

では最後に穴の部分の直径を調べてみると、おおむね6mm
なお、リングを形成しているセラミック素材の厚みは2mm程度でした。

以上をまとめてみると……

【エーハイムメックのサイズ】

・上面直径1cm×長さ1.1cm
・壁の厚さ2mm
・内側の直径は6mm

これはろ材の中では小さい部類で、さらに大きな穴が開いていることで通水性を実現しているものだと思われます。

さて、話を元に戻しまして、次はメックのちょっと残念な点を書いていきたいと思います。



エーハイムメックのここが残念!


残念な点その1:多孔質ではない

多孔質であったらどんな良かったことかと、大昔(15年以上前)はよく思っていました。

しかし現在では、意識を改めました。
物理ろ材として使うのなら、ゴミがよく剥がれ落ち洗浄が簡単であり、耐久性も十分だからです。もちろん、エーハイムから多孔質のリングろ材が出れば激しく興味を掻き立てられますが、サブストラットプロという専門職がある以上、立ち位置はこれでいいのかもしれません。

そもそも、生物ろ材ではなく、物理ろ材もしくは生物物理ろ材です。たしかに、多くを求めて「多孔質」にこだわりがある人にはお勧めできません。しかし、表記通りの性能を求めている人には、まったく気にしなくていい問題だと思います。

アクアリウムは趣味の世界です。幅広い製品群があります。

多孔質リングろ材が気になる方には、シポラックスやパワーハウスなどをお勧めします。エーハイム製の多孔質ろ材をお探しなら、エーハイムサブストラットやサブストラットプロがお勧めです。

エーハイメックの特徴は、多孔質でないからこそ生まれているからです。



残念な点その2:セラミックなので高い

今までの話と少し矛盾しているようですが、これは、「プラスチック」や「ガラス」ろ材と比較した場合についてです。

ペロンとコロニーが剥がれるプラスチック製がいいのか、
それとも割れやすいガラス製がいいのか、
高価なセラミック製がいいのか……。

すき好みが分かれるところで、耐久性の違いもあって一概にはどちらが安いとか高いとか言い切れないところが、この問題をより一層複雑にしています。

なお、わたしのメックはエーハイム2222に付属してきたものであり、このフィルターは2005年に「終売」していますので、ざっと見積もっても15年は利用していることになります。(修正現在では19年)

多少値が張っても15年利用できるものがいいのか?
それよりも、より安いものがいいのか?

……こう書くと多少高くてもメックのほうがよさそうに聞こえますね。
しかし、15年もアクアリウムを嗜む人は、全体どれくらいになるのでしょうか……?
わたしには判断できません。
また、近年プラスチック製のろ材が急激に進化しており、牙城を崩そうと魅力的な新しいものが続々投入されているのも事実です。

そのため、次のような問題が生まれることも。

多くの人が利用しておりコスパの良いが目新しさのないエーハイムメックか?
ミューロA、プラスワンなど話題性のあるプラスチックろ材か?

……。

一言では片付けられない選択の難しさがそこにはあります。
が、わたしとしては、

純粋にコストとパフォーマンスを考えるのなら、エーハイムメックをお勧めします。

質実剛健そのものだからです。



総評

生物ろ過、物理ろ過、通水性の良さ、掃除のしやすさ、全てのバランスが高次元でとれています。さらに、安くてどこにでも置いてあり、なかなか壊れない、おすすめのろ材です。

ただし、水槽新規設置時など資金に限りがある場合、セラミックにこだわりがなければ、ガラス製やプラスチック製もあるので、そちらの方も選択肢に入れてみるといいでしょう。

また、純粋なリング型の生物ろ材や多孔質ろ材を求めている方は、パワーハウスやシポラックスがいいかもしれません。

というわけで、今回はここまで。
長文読んでいただき、ありがとうございました。



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