ミクロソリウムの子株~活着まで
(2024/9/7修正)
今回はタイトル通り、ミクロソリウムの子増やし方について紹介してみたいと思います。
また、後日追記となりますが、株分けについても簡単に述べていきます。
水草用ライトさえあればCO2いらずのこの植物、その増やし方も極めて簡単なものとなっています。
ミクロソリウムはシダ植物
種子植物とシダ植物
まずは、中学・高校の復習になりますが、ミクロソリウムの植物学上の分類について説明したいと思います。
さて、ミクロソリウムは、不思議なことに葉から子株が出てくる植物です。
これは、私たちが常日頃思い描いている植物とは少し違います。普段想像するものは、花粉が雌しべに付着し、精細胞と卵細胞が受精して種(種子)を作ります。これがこぼれ落ちて発芽するので、種子植物といいます。
対して、ミクロソリウムは親株の葉から、芽や根が出てくるわけです。種子植物にはなかなか見られない特徴を有していると言えます。さらによく観察してみると、葉の裏にぽつぽつとした黒い点々があります。
これは何でしょうか?
胞子嚢という、胞子を作る場所なんです。
実は、ミクロソリウムはシダ植物に含まれ、その中でもヌカボシクリハラン属ウラボシ科に分類される植物となっています。
シダ植物とは?
シダ植物とは何でしょうか?
ここではそれについて掘り下げたいと思います。
まず、これに分類される条件ですが、胞子で増える植物のうち、根・茎・葉、つまり維管束がある植物のことです。余談ですが、維管束があり種子で増えるのが種子植物、胞子を持ち維管束がない植物がコケ植物とされています。
話を戻しまして、その胞子が作られる場所を胞子嚢といいます。
先ほども述べた通り、ミクロソリウムの葉の裏側にある黒い点々がこれにあたります。ここで作られた胞子が発芽すると、前葉体と呼ばれるものが作られます。その上で造精器と造卵器が作られ、それぞれ精子と卵を作り交配し受精卵になります。それが生長し晴れて子株となるわけです。
少しわかりづらいので、箇条書きにしてみましょう。
親株
↓
胞子
↓
前葉体
↓
卵・精子
↓
受精
↓
子株
↓
親株
このように、その時その時で形態を変化させ、ぐるぐると代を重ねていくので、この一連の流れを生活環といいます。
子が親と同じ形で生まれてくることに慣れ親しんだ私たちヒトには、少しイメージしづらいものですが、この生活環を持った動植物は実に多く存在します。
ミクロソリウムの前葉体はどこ?
その前葉体はどこにあるのでしょうか?
繰り返しますが、シダ植物の生活環では必ず親株(胞子体)から胞子が生まれ発芽し、前葉体となります。そこで交配するからこそ、子株が生まれてくるのです。
ミクロソリウムの場合、子株は葉に付着する形で生まれますから、前葉体は葉にできると考えるのが順当だと言えます。もっとも、葉ですら気が付いたら出ていたということが圧倒的に多いので、その存在に気づかないことがほとんどです。
というより、実はわたし、前葉体を見つけたことがありません。
前葉体はハート形をしているはずなので、それと思わしきものならすぐに見つかるはずなのですが……。ここ20年間栽培している中で、それらしきものを見たことはなく、いまだに不思議に思っていることの一つです。場所は分かっているので、おそらく肉眼では気が付かないくらい小さいのかもしれません。
古い葉の先端から子株(2n)が出ている(赤〇部分) |
理屈ではその根元に前葉体(1n)があるはずだが |
どのような葉に子株ができるのか?
ミクロソリウムの子株は、親株の葉で芽生えると述べました。
では、実際にどんな葉にできるのでしょうか?
それは、古い葉や痛んだ葉です。
持論ですが、ミクロソリウムの有性生殖は、葉1枚1枚で判断されているのだと思われます。そして、何らかの理由で葉が危機だと判断した場合のみ、有性生殖が行われるようです。でなければ、桜の開花のように一斉に生まれるはずだからです。
とにもかくにも、子株ができるのに人間の手は不要です。
葉が古くなれば自然に子孫を作ってくれるのです。言い換えれば、放っておけば勝手に生えてくるわけですから、豆サイズのミクロソリウムを慈しみ育てるのみ。
どうです?
栽培も簡単なら、増やし方も簡単♪
ミクロソリウムってステキでしょ?
ミクロソリウムの増やし方
もし子株を見つけたら?
子株が段々大きくなり、草丈も3~5cmになったら、いよいよ流木や溶岩石に活着させる段階です。
まず、子株をやさしく傷つけないように古い葉から剥がします。
そして、丁寧に木綿糸やビニタイで固定します。
もし、無理に剥がして子株を傷つけてしまいそうなときには、古い葉ごと流木に固定してしまっても良いと思います。また、景観的に許すのなら、さらに大きくなるまで親株に付けたままにしても構いません。
どちらにせよ、古い葉が朽ち果てる頃には、活着するための根が出ていることが十分に期待できます。この時期に気を使って育てれば、立派な親株になってくれます。大切に育ててあげてください。
子株を利用した増やし方の欠点
流木や石に固定したら、後は普段通りに管理します。
まず、コケが付着しないように、他の水草で極端な日陰にならないようにします。
ミクロソリウムは陰性植物ですから、盛んにコケの侵略を受けやすい光が良く当たる一等地よりは、多少の日陰でコケの生長も緩やかな二等地で十分です。
また、当然ですがライトを設置し、適宜カリウム液肥を与えます。
水草用ライトは必須ですが、液肥は陽性植物のように毎日添加する必要はありません。気が向いたときの施肥で間に合うことがほとんどです。
なお、CO2の添加はお財布事情に合わせて大丈夫。ただし、利用した方が生長は早いため、将来水草水槽を作りたいのなら、安物でも十分なので手に入れておいた方がいいかもしれません。
以上のような環境を用意できれば、ゆっくりと生長していきます。
もちろん、いきなり葉が大きくなることはなく、小さい葉が密に生えるようにして徐々に大きくなり、最終的にはお店で見るサイズになります。
そまで育てて、おおよそ1年~2年程度かかります。
そのため、子株はたくさん収穫できますが、それを全て増やすのは割に合いません。気に入った株や思い入れのある株のみ増やすようにしましょう。
急いでいる時は、ショップで買ってきた方が良いでしょう。
ミクロソリウムの株分け
以上あれやこれやと述べた上ましたが、実は子株を利用せずとも株分けで増やすことができます。
株分けの方法は、アヌビアス・ナナなどと同じような手法がとれます。まずカッターナイフなど鋭く切れる刃物をエタノールでよく消毒し、それで茎を切断し分割。あとは、そのまま活着させたい流木や石に、木綿糸やビニタイで巻きつけるだけです。なお、この植物の茎とは茶色の根が出ている部分のことをさします。葉柄を茎だと勘違いしている人もいるようなので、お間違いのなきよう。
さて、この方法ですが、どうしても意図的に傷つけることになり、切断面ができるわけです。そのため、病原菌が侵入したり、腐敗が進行したりすることも稀にあります。全くのノーリスクというわけではありません。
しかし、生長を待たなくて済むので、それと比べれば短時間で2株に分かれるわけですから、時間のない人は覚えておいて損のない方法です。また、メンテナンス時の事故で茎が折れた際の有効活用だと頭の片隅に置いておけば、禍を転じて福と為す……かもしれません。
ゆっくりとした生長ゆえに
ミクロソリウムは成長速度こそ遅いですが、大変強靭な種類ですし、弱い光でも生長します。
葉も分厚いので、黒ヒゲ苔をはじめとしたコケ類の駆除には、木酢液も利用できますから、よほどのトラブルがない限り、漫然と栽培しても枯死に至ることはありません。
そんな水草でも、気泡をつけた時の美しさは目を見張るものがあります。
やはり陽性だろうと陰性だろうと、水草は水草。CO2添加終了前や水換え直後に見られるその光景に、日々の疲れが吹き飛ぶほど癒やされること間違いなしでしょう。
ミクロソリウムは、有茎草のように6ヵ月、1年という短いスパンではなく、腰を据えて3年、5年、10年と、長いスパンでお付き合いができる水草です。そのため、大変愛着のわく水草でもあります。
みなさんも、そんなゆっくりと付き合える可憐な水草を栽培してみませんか?
というわけで、今回はここまで。
長文読んでいただき、ありがとうございました。
0 件のコメント:
コメントを投稿