大磯砂の酸処理とそれが与える水質への影響
(2024/10/20 編纂・修正)
今回は、クエン酸で大磯砂を酸処理し、水質に及ぼす影響を試験紙で確認してみたいと思います。なお、硬度が上がる理由や、クエン酸で貝殻が溶ける化学式については、こちらの記事をご覧ください。
なお、今回の記事で紹介している物品は、全て自費で購入したものです。
失敗から学ぶ酸処理の道具
さて、なぜ大磯砂の酸処理をしているかと言いますと、わたしの水槽で利用している「桜大磯砂」が劣化してきたからです。手で擦ると、たくさんの崩れた粒子がボロボロと出てくるような状態となってしまいました。そこで、代わりの大磯砂を購入したのですが……、ただ交換するのでは面白くありません! 気になっていた酸処理を施すことにしたのです。
今回利用した道具となります。
・大磯砂 0.8kg × 3袋
・バケツ
・クエン酸 200g × 3袋(600g)
・水 5L
・大きなトレー
・ろ材ネット
・手袋
・スコップ(園芸コテ)
今回はバケツのフタを代用しましたが、プラスチックのトレーがあると便利です。この上に大磯砂を置き、そこでじっくりと貝殻やゴミを除去するからです。
なお、処理中は濡れていますので、新聞紙のような湿気ると強度が落ちるものはおすすめできません。穴が開いたり、ちぎれてしまったりすれば、砂がばらまかれる大惨事となるからです。
また、大磯砂を入れるネットに関しては、ろ材ネットをおすすめしたいと思います。対して、洗濯ネットはあまりおすすめできません。と言いますのは、後者はファスナーが金属であることがよくあり、それらが酸で溶けてしまうからです。これでは、砂を取り出す際に支障をきたし、さらに金属イオンが付着するので、生体に害がある可能性も否定できません。より入念な洗浄が必要となり、ひと手間増えることは間違いありません。
とにもかくにも、以上2点は今回の失敗点です。知っていれば簡単に避けられるトラブルですから、道具のチョイスは十分に気を付けましょう。
大磯砂の酸処理(方法と注意点)
それでは、作業をしていきましょう!
ゴミや貝殻を除去し、洗浄する
まずは、大きいトレーの上に大磯砂を取り出し、貝殻やゴミがないかチェックしていきます。なお、今回購入した商品は品質が良好だったこともあり、不純物はほとんど見つかりませんでした。
次いで、お米を研ぐような感じで軽く洗います。この時、素手で大磯砂を洗うと爪がボロボロになるので、なるべくゴム手袋や軍手で保護しましょう。濁りと汚れが取れるまで、水を交換しつつ10回ほど濯ぎ洗いをします。
それが終わりましたら、スコップを用いてろ材ネットへ大磯砂を入れます。この際、洗濯ネットと新聞紙を用いて先述のトラブルに見舞われましたので、みなさんもご注意を。
それでは、いよいよクエン酸で酸処理をしていきます。
クエン酸水溶液を作り、大磯砂を入れる
今回用意した水は5L、クエン酸600g、そして大磯砂は2.4kgとなります。後述しますが、水質の試験結果では、この分量で十分に酸処理できたようです。とはいえ、飽和水溶液にはなりませんでしたので、確実に貝殻を溶かしたいのなら、クエン酸の分量はもっと増やしてもいいかもしれません。
そして、大磯砂をネットごとクエン酸水溶液に浸け込み、酸処理をしていきます。私見ではありますが、ここから先の作業はベランダなど屋外での実施をおすすめします。クエン酸であるため臭気はほぼなく、また化学反応的には出てくる気体はCO2であるため、爆発などの危険もありません。それでも、溶液は酸性ですから壁紙などに付着すればシミになるかもしれませんし、そもそも室内でシュワシュワと泡が上がり続けるのはあまり良い気がしません。念には念を入れて屋外で実施するようにしてください。
気泡なくなるまで待ちながら、反応が止まっていないか確認
と、いうわけで、お待ちかねのぶくぶくタイムとなります。今回の作業では、クエン酸投入から約半日で気泡の発生が止まったことを確認しています。このような発泡の停止は、前回紹介した化学反応式から、反応の終了と判断できるので、1時間おきに様子を観察しておきましょう。
また、この化学反応はCO2が出る中和反応であるため、pHが中性以上かつ気泡が止まる=クエン酸が足りないということを意味しています。ポツポツとした気泡が生まれるのが止まったら、まずはpHをチェックしてみましょう。
今回は、予想以上に早く気泡が止まったため、念のため1週間このままの状態で放置してみました。しかし、期間中は常に酸性を示し、一度たりとも中性になることはありませんでしたので、クエン酸水溶液の濃度は十分なものであったと考えられます。
なお、大磯砂に含まれる貝殻の量によって変化しますので、実際に酸処理する場合はクエン酸溶液のpHを適宜チェックした方が良いでしょう。
酸処理済後よく濯ぎ、試験紙でテストするべし。
酸処理が終わった大磯砂は、クエン酸が深く染み込んでいるため、ちょっとやそっとの流水では中性に戻りません。ごしごしとお米を研ぐように洗いながら念入りに濯ぎ洗いをしましょう。
当然、洗浄が不十分な状態でそのまま利用すれば、低pH高GHとなり水質に大きく影響します。魚やエビ、水草に大きなダメージを与える可能性が高いです。
また、詳しくは後述しますが、今回は2~3時間かけて入念に洗い込みましたが、それでも完全に酸が抜けきりませんでした。半日かけるくらいの気概を持った方がいいかもしれません。
とにもかくにも、たとえ濁りやゴミがなくても、ひたすらに洗いましょう。もちろん、実際に利用する直前にも、酸処理した大磯砂が水質に及ぼす影響がないか必ず試験紙や試薬でチェックするべきです。
大磯砂からクエン酸カルシウムの結晶を取り除く
濯ぎ終わりましたら、大磯砂をネットからトレーにあけて、クエン酸カルシウムの結晶を取り除きましょう。結晶は球体で白濁りしているので、グレーの砂の中からでも、すぐに気が付くはずです。
これらは大変もろく、そのほとんどは濯ぎ洗い中に崩れて水と一緒に排出されているはずですが、まれに大きなものが残っていることがあります。ほとんど水に溶けないため、残しておいても水質には大きな影響はないと思われますが、水景を汚してしまうため除去しておきましょう。
なお、今回は米粒の1/8ほどのサイズの結晶が、大磯砂に混ざっていました。写真を撮影しようと手でつまみ上げたところ、残念ながらぽろぽろと崩れ落ちてしまいました。そのため写真はありません。悪しからず。
硬度・pHが水質に影響しないかチェックするべし
それでは最後に、酸処理済みの大磯砂を水に浸し、試験紙や試薬でpHが上昇していないか確認してみましょう。pHがGHともに大きな変動がなければ、酸処理は完了となります。あとは砂からカルキを抜いて、水槽に投入するばかりです。
なお、今回の酸処理は、最終確認をしたところ見事に洗浄に失敗していました。次パートよりその顛末を述べていきたいと思います。
酸処理した大磯砂が水質に与える影響
酸処理後の濯ぎが不十分だと?
話は戻り、今はクエン酸カルシウムの結晶を除去し、最後の水質チェックをしているところです。
まずは、比較対象として水道水をテトラ テスト6in1で確認してみました。
【水道水】
GH 4°d
KH 3~6°d
pH 6.8
次は、未処理の大磯砂を1日入れた水道水です。
【酸処理前】
GH 4~8°d
KH 3~6°d
pH 6.8
わずかですが、GHが上昇しているようです。これが、「大磯砂を入れると硬度が上がる」という現象だということでしょう。
最後に、酸処理した大磯砂を1日入れた水道水の水質を測定してみます。
果たしてうまくいっているでしょうか? GHが下がっていれば大成功です!
それでは、どうぞ!!↓
【酸処理後】
GH 8~16°d
KH 3~6°d
pH 6.4以下
あらやだ、なにこれ!?
GHは上昇し、pHは低下しています。まるっきり酸処理に求めた結果とまったく逆の結果となりました。なぜこのようになるかというと、クエン酸水溶液で炭酸カルシウムを溶かしたためで、いまだ大磯砂にはそれらの水素イオンとカルシウムイオンが豊富に含まれていることを示唆しています。(詳しくはこちらの記事をご覧ください。)
つまり、洗浄不足です。
当然ですが、このようなものを水槽に入れるわけにはいきません。再度濯ぎ洗いをすることになりました。急がば回れとはこのことですね。
酸処理済み大磯砂が水質に与える影響
貴重な休日の半分を使って再度よく洗い、同様の方法で水に浸した後、満を持しての最終確認です。
では、酸処理の真の実力を見ていただきたいと思います!
【酸処理後/再洗浄】
GH 4°d
KH 3~6°d
pH 6.8
見事に洗浄前と比べてGHが半減しています。水道水と比べてもpH、GHはほぼ同じ、つまり水質に影響しない大磯砂が完成したと言えそうです。なお、わが家で10年以上利用した桜大磯砂と比較しても……
【10年物桜大磯砂】
GH 4~8°d
KH 3~6°d
pH 6.8
こちらと比べても、硬度が低くなっていることが確認できます。結果は大成功だと言えそうです。
まとめ
最後に簡単に結果をまとめて、記事を終えたいと思います。
・クエン酸でも酸処理できる
・酸処理後はよくすすぐべし!
といったところでしょうか?
ただし、大きな誤算が1つありまして……
そもそも大磯砂には吸着作用がないので、水道水よりも硬度を下げることはできません!
よく考えれば当たり前のことなのですが、思い違いをしていたようです。結局、この大磯砂の使用は諦め、ソイルを敷くことになるのですが、それはまた別の機会に。
とうわけで、今回はここまで。長文を読んでくださり、ありがとうございました。
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