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2018年1月8日月曜日

実験!ソイルの軟水化効果はいかほどか?

実験!ソイルによる水の軟水化

((2024/10/14 編纂・修正)

今回は、ソイルを用いるとどのような水質変化があるか、調べてみたいと思います。
半分読み物、半分実験&解説という記事になっております。

(これがもっと早く発売されていたなら……)


ソイルを知らなかったあの日


突然のショック状態

今からもう20年前、わたしはソイルを知りませんでした。さらに言えば、水草はもちろん、水質について何もわかっていませんでした。いえ、実際には高等教育で硝化作用を知っていたはずです。しかしそれが、現実の水槽とは結びついていなかったのです。ましてやpHや硬度となれば……。

その日、わたしは初めてのCO₂添加を前にして、底砂を大磯砂からソイルへ変更する作業を行いました。以前、プレコ水槽を大磯砂からガーネットサンドへと入れ替えた経験もあったので、大きなトラブルなく終えて無事に注水することができました。

しかし、どうにもタンク内の調子がおかしいのです。カージナルテトラたちは右に左にせわしなく動き回り、ラミーノーズテトラたちは群れで隅に固まり動こうとしません。こんな光景は……、有毒なゴミがたまりやすい立ち上げ時でしか見たことがありません。となれば、やることは1つ。騒ぐ胸をおさえ、アンモニアや亜硝酸の試薬を手に取るのですが、どれも正常値ばかり。一体全体何が起きているのか? 皆目見当がつかず、何が正解かもわからず。テトラ テスト6in1がまだない当時、わたしには見守ることしかできなかったのです。



水草にソイルを使う理由

さてこの現象、ソイルにより急激にpHや硬度が減少したことが原因で、軽いショック状態だった今では考えています。思い返せば高校や大学で生物専攻だったこともあり、石の小粒である大磯砂より自然な土壌に近いので、根の活着が促されるためだとばかり思っていました。ソイルを用いる一番大切な部分が理解できていなかったのです。

そもそも、水草水槽でソイルを利用する最大の理由とは何か? 水を弱酸性の軟水にすることです。
これを詳しく書くととても収まりきらない話であり、ほとんど需要のない話のため割愛しますが、最終的には、水槽内の二酸化炭素の濃度や、光合成での酵素に直接関わります。美しいディフューザーはともかく、わざわざ専用の器具を用意して添加しているCO₂、それを増やすも減らすも硬度次第なのです。

とにかく、ソイルがどれだけ水質を変えるのか、知ってもらいたい! という気持ちで、以下のような実験をすることにしました。



実験! ソイルがもたらす水質への変化


手順

それでは、プラチナソイルスーパーパウダーで実験してみましょう。

① 水1Lをバケツに取る
② テトラ テスト6in1にて測定し、比較対象とする
③ 60cm水槽に利用する分量と同じ割合のソイルを投入する
④ すぐにテトラ テスト6in1で測定する
⑤ 24時間後、2度目の測定する
⑥ 72時間後、3度目の測定する

それでは、今回も利用するソイルの量を計算していきます。まず、60cm規格水槽の水量を求めたいと思います。

幅60cm×奥行30cm×高さ36cm = 体積64,800㎤
64,800㎤ = 64,800ml = 64.8L ≒ 65L
(1㎤ = 1ml であるため)

以上より、60cm規格水槽の水量はおおむね65Lということになります。実際は、ガラスの厚さのため、これよりも少ないものになっているはずです。さて、わたしが調べたところ、この水槽に利用すべきソイルの量は8~11Lだそうです。今回使う水の量は1Lであるため、60cm規格水槽と同じ割合になるようにソイルの量を計算します。

65L:8L=1L:x
65L × x= 8L × 1L
65x= 8L
x = 8L/65
x ≒ 0.123L = 123ml

水1Lに対して、ソイル123ml投入すればよさそうです。それでは実験をご覧ください!
と、言いたいところですが、方法で述べた時点で想像がつくほどの非常に簡単なものであるため割愛し、いきなり結果となります。



結果

それでは、結果発表です。

【ソイルなし時間】
GH 4~8
KH 3~6
pH  6.8

【ソイル投入後0時間】
GH 4
KH 3~6
pH 6.4~6.8

【ソイル投入後24H時間】
GH 4
KH 3~6
pH 6.4

【ソイル投入後72時間】
GH 0~4
KH 3~6
pH 6.4

(GK,KH,単位:°d)

GHは72時間で最大8°dあったものが0°d近くまで、また、pHも6.8から6.4へと減少する結果となりました。対してKHの変動はありませんでした。



考察:GHとKHの違い


GHとは何か?

pHとGHは低下していますが、KHは低下していません。そもそも、硬度とは何でしょうか?
例えば、お湯を沸かすだけで味がまろやかになります。これは、それらが煮沸により沈殿し、硬度が下がるためです。紅茶を入れても同様の効果があります。こちらはタンニンが吸着するからです。このように、お茶や飲料水、さらにはせっけんの泡立ちづらさなど、昔から人々の生活に溶け込んでいます。そのため、人々は特に意識することなく硬度という言葉を利用していたため、大きな曖昧さを内包しています。
しかし、現在においては一般的に硬度と言えば、これはマグネシウムイオン(Mg²⁺)やカルシウムイオン(Ca²⁺)の総量、すなわち総硬度(GH)のことだとされています。ソイルはこれらを吸着し、軟水にする効果があるのです。



KHとは何か?

では、KHとはなんでしょう? これは数ある硬度の中の1つで、炭酸塩硬度というものです。その意味は、炭酸水素イオン(HCO₃⁻)と結合していたカルシウムイオンやマグネシウムイオンのことです。文中の例にした煮沸で下がる特徴を有しているので、一時硬度とも呼ばれています。
さて、KHを求めようとすると大きな問題が生まれます。なぜなら、カルシウムやマグネシウムイオンの全てが炭酸水素イオンと結合していたとは限らないからです。硫酸塩や塩酸塩といった永久硬度もそれらの供給源となります。そのため、水に溶けている、すなわち電離している状態で結合相手別に分けて探すのは至難の業です。そこで、実際には炭酸水素イオンを調べ、炭酸塩硬度としています。イオンの数だけ結合していた相手(Mg²⁺とCa²⁺)がいたはずだ、と考えるのです。



炭酸水素イオンはCO₂からも生まれる

が、水槽では、そうは問屋が卸しません。

実際問題、この炭酸水素イオンは硬度以外にCO₂そのものから生まれますし、さらに言えば、pHで大きく濃度が変わります。そのため、硬度の1つとして捉えるよりは、飼育水の緩衝作用のバロメーターとして、もしくはCO₂の添加具合の指標として用いるべきものなのです。突然、全く別の話が出てきて驚きかと思いますが、実は密接につながっているのです。が、これ以上化学の話を書くと、ややこしくなるため今回は割愛します。

(CO₂は水に溶けると……)

とにもかくにも、実際にソイルが吸着しその量が減少するのはマグネシウムイオンやカルシウムイオンですから、GHは減少、KHは変化なしという結果になりました。

ソイルを知って、水草栽培の糧にしたいものです。わたしも調べれば調べるほど新しい知識が増えていきます。
というわけで、今回はここまで。
長文読んでいただき、ありがとうございました。



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