ゼオライトで軟水化してみた
(2024/10/23 編纂・修正)
今回はゼオライトで本当に硬度が下がるのか、実験で確認してみたいと思います。
イオン交換の優先順位とそれが意味するもの
まずは、ゼオライトが硬度を下げる仕組みについて述べていきたいと思います。
イオン交換と硬度
さて、硬度を下げると聞いてソイルを思い出した方もおられるかと思います。ゼオライトもソイルと同じく、硬度を下げることができるものです。これは簡単に言えば、カルシウムイオン(Ca²⁺)やマグネシウムイオン(Mg²⁺)などの陽イオンを吸着する作用を持っているからです。
とはいえ、何でもかんでも吸着するようにはできていません。なぜなら、イオン交換という作用で吸い着けているため、ある物質を手にするには今持っている物質を手放さなければならないからです。まさしく、「交換」だと言えるでしょう。
ゼオライトは負の電荷をもつ
このイオン交換には、優先順位というものがあります。低いものを手放し、高いものを吸着するのです。
Cs>RB>K>NH₄>Ba>Sr>Na>Ca>Fe>Al>Mg>Li
(セシウム)>(ルビジウム)>(カリウム)>(アンモニウム)>(バリウム)>(ストロンチウム)>(ナトリウム)>(カルシウム)>(鉄)>(アルミニウム)>(マグネシウム)>(リチウム)
まず、優先順位ではなく上の元素(一部分子)に着目してください。これらは水に溶けると、どれも陽イオンになるものばかりです。ゼオライトは、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)、O(酸素)により結晶の骨格を形成しており、負の電荷を持っています。そのため、陽イオンばかりを吸着するのです。
イオン交換順位が水槽内で意味していること
それでは、上の順位をよく見てみましょう。気になるのは、やはり硬度を上げてしまうカルシウムやマグネシウムよりも、栄養素であるカリウムやアンモニウムの方が順位が高くなっています。これは、水槽内でゼオライトを利用して軟水化させていた場合、K肥料のカリウムイオン(K⁺)とカルシウムイオンやマグネシウムイオンが交換され、硬度が上がってしまうということを示唆しています。また、一部の陸上植物の液肥に含まれるアンモニウムイオンでも同様のことが言えるでしょう。そのため、ゼオライトで軟水化をするためには、それらが存在しない水で軟水化を施す必要がありそうです。詳しくは、後半に述べたいと思います。
ゼオライトの軟水化実験!
ここからは実験パートになります。
ゼオライトを水道水に浸け込み、24時間後にどれだけ硬度(GH、KH)が減少するのか、実験を行いたいと思います。
実験道具
実験に利用する道具です。
・ゼオライト(20g)
・水道水(1L)
・バケツ
・テトラ テスト6in1
・タイマー
今回、実験で使用するゼオライトは、安くて量が多い「A-CUBE Factor」製のものを用意しました。
パッケージ正面 |
水道水とゼオライトの量は、パッケージ裏面の記載通り、10Lに対して200gという割合(20g/L)で利用しました。また、硬度については、もはやお馴染みのテトラ テスト6in1で測定しました。
実験方法
なにはともあれ、まずは水道水をバケツに汲み取ります。これを「比較対象」、「3時間後」、「24時間後」の計3回のテストで利用していきます。というわけで、まずは汲み取った直後に最初の硬度測定を行います。こちらが今後の比較対象となります。
次いで、先に述べた通り1Lに対して20gのゼオライトを入れ、スマホのタイマーをセットして実験スタート。ゼオライト投入後3時間後と24時間後に硬度を測定してみました。はたして、ゼオライトは水質にどのような形で影響を及ぼしたのでしょうか?
結果は、軟水化効果はあり!
それでは測定結果の発表です。
まず、わが家の水道水。
【水道水】
GH → 4°d
KH → 3~6°d
pH → 6.8
水草の調子が低迷するほど妙に高い季節もありますが、今回はまずまずの硬度のようです。
次いで、ゼオライト投入3時間後の結果です
【3時間後】
GH → 0~4°d
KH → 3~6°d
pH → 6.8
がっつりとGHが下がっています。GHはカルシウムイオンとマグネシウムイオンの総量ですから、これらが吸着されたことを意味しています。
さて、ソイルの時も同じような実験をしてわかったことなのですが、ゼオライトの陽イオンの吸着スピードは、かなりスピーディに起きるようです。と言いますのは、24時間後の測定結果をご覧ください。
【24時間後】
GH → 0~4°d
KH → 3~6°d
pH → 6.8
3時間後とほぼ硬度が変わりません。つまり、3時間で「ほとんど」のマグネシウムイオンやカルシウムイオンが吸着されたと言えるからです。オライトの軟水化作用は強力だと言えそうです。
ゼオライトの吸着作用についての考察
GHとゼオライト
さて、GH(総硬度)とはすべてのマグネシウムイオンとカルシウムイオンを合わせた総量のことです。「すべて」とあえて使うのは、その供給先が後で述べる炭酸塩、さらには硫酸塩や硝酸塩、そして塩化物と多岐にわたるからです。そして、実験から分かる通り、ゼオライトにはこれらを吸着し、GHを下げる作用があるということです。
とはいえ、どれくらいのゼオライトの量に対し、どれくらいの水の量が適切なのか? これについては、実際に利用してみて、各々判断する必要がありそうです。なお、繰り返しますが、その軟水化作用の効果が極めて強いようです。水質の急変を起こさぬよう、メーカーの規定より少量から利用した方がよいかもしれません。
KHとゼオライト
次いで、私たちアクアリストが知っているもう一つの硬度、KHについてです。
KHとは炭酸塩硬度の略で、炭酸水素イオンと結合していたマグネシウムイオンとカルシウムイオンを合わせた量のことです。しかし、先に述べた通り、各イオンの供給元は複数あり、どれが炭酸水素イオンと結合していたものなのか、見分けることは困難です。そこで、発想の転換をして、
「炭酸水素イオンの量を数えれば、それと結合していたマグネシウムイオンとカルシウムイオンの量もわかるじゃない!!」
と考え、便宜的にKH≒炭酸水素イオンの量としてあります。=でないのは、それ自体が硬度ではないからです。
さて、この炭酸水素イオンですが、硬度以外でも実はCO2が水に溶ける際にも生じ、その存在する割合はpHに影響を受けたりもします。また、それ自体に緩衝能がありpH低下を防ぐ作用があったりしますが……、それを書き始めると非常に長くなるので今回は割愛します。とにもかくにも、アクアリウムと深いつながりがあり、KH=炭酸水素イオンと結合していたマグネシウムイオンとカルシウムだと、単純に読み解くには無理があるのです。
その結果を示すかのように、今回の実験ではKHは一切低下していません。これは、ゼオライトには「炭酸水素イオンと結合していたマグネシウムイオンとカルシウムを吸着する力がない!」ということではなく、単に炭酸水素イオンは陰イオンであるため、吸着されなかったということを意味しているものと思われます。現に総量であるGHは低下していますからね。
ゼオライトは浄水器のように使うべし
ここからは理論や実験の結果を実際の管理とすり合わせた話になります。
まず、ゼオライトは理屈の上では、水槽で利用するにあたり少し問題点があります。先に述べたイオン交換の順位のことです。
もし、イオン交換の順位が正しく機能するならば、カリウムイオンやマグネシウムイオンよりも優先的にカリウムイオンをゼオライトが吸着してしまうことになります。そのため、ソイルのように水槽内でゼオライトを利用していれば、液肥を施しても肥料を吸着してしまうため効果が表れず、そればかりか吸着していたイオンまで放出し、硬度が上がってしまうというよくない事態も考えられます。
しかし、しっかりとした解決策があります。それは、利用する水に前もってゼオライトを入れて硬度を下げ、換水時には水のみを水槽に入れるという方法です。つまり、浄水器のように利用すればよいわけです。このようにすれば、せっかく施肥した肥料分を吸着されずに済み、硬度も下げることができます。今回の分量通り利用すれば3時間で効果がありますから、水槽掃除の日の朝に準備すればばっちりでしょう。もちろん、前日に入れておくのもよいでしょう。
なお、ゼオライトの汲み置き水を作ると、なぜか水が白濁します。おそらくゼオライトから出た微粒子ではないかと疑っているのですが、数時間後には沈殿、もしくはフィルターに濾し取られるためか、白濁は解消するようです。なお、これらで換水しても、わが家の水槽では生体に影響があったところを確認しておりません。淡水エビなどには硬度ショックの問題は常に付きまとうかもしれませんが、魚に対しては比較的安全に利用できるかと思われます。
というわけで、今回はここまで。
長文読んでいただきありがとうございました。
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