水草栽培の縁の下の力持ち
真冬ながらも水温は安定し、水槽の中の小さな命たちが、平穏に暮らせる季節となりました。いかがお過ごしでしょうか。
どうもこんにちは。ごん太です。
さて、前回はADAのブライティ・ニュートラルKのレビューをしてみました。
カリウム肥料というものは大変奥が深く、かなりの長文となってしまいました。今回は、同じカリウムでも固形肥料。
テトラ イニシャルスティックについて。
なるべく奥に分け入らずに、話をしようと思います。
まずは、この話の経緯について、次いでパッケージの紹介、最後に使用感を記していきます。それでは続きをどうぞ!
なお、当記事は↓目次リンクより、お好きな章へとジャンプできます。
お忙しい人は、是非ご利用ください。
水草の生長が止まった! どうしよう?
お正月。そこに至るまでが主フは慌ただしい。
大掃除にクリスマス料理、さらには新年を迎える準備。また何かと体調を崩しやすい時期でもあります。年末年始が、一瞬のように過ぎ去っていくのです。
そして、そんな季節も終わったとある日、久しぶりにゆっくりと我が家の水槽を見る。
音楽を聞きながら、プレコにばれないようにそっと水の中を覗く。これがわたしの至福の時。
が、なにやら水景がおかしいのです。
顔を近づけて水草を観察。どうにも新芽が出ていない。
生長がストップしていました。ミクロソリウムは透明な生長中の葉が少なく、ロタラは苔まみれ。残念なことにトリミングしたてのヘアグラスはその直後で育ちが止まり、根から剥がれてコケが付着して再起不能。
慌てて真相を探ることに。
ライトは正常、CO2もディフューザーから登っている。pHは変化なし、他の水質もそれほど逸脱した値になっていない。もちろん液肥も添加している。
明るさや滴下数、さらには数値としてあらわれている物には大きな問題がない。
だけれども、目の前の植物の調子は明確におかしく、健康とはほど遠い。こうなってしまうと、なかなか原因がはっきりとわかることがなく、その対処も難しくなります。
数少ないヒントから、ヘアーグラスの根がうまく張れず引っこ抜けるという現象より、
今回はソイルの期限切れからのカリウム欠乏症と、ひとまず仮説を立ててみることにしました。
GHの変化はありませんでしたが、以前ソイルをセットしてから丸一年経過していたのも、その仮説を後押しした一因です。そして、その交換ついでに、カリウムの固形肥料を追加することにしました。
テトラ イニシャルスティックを入れるのです。
実は成分詳細はパッケージに表記されておらず、鉄とマンガン、そして有機物(後者2つは同社webより)の3つを言及するにとどまっています。
しかし、多くのアクアリストの考察や成分分析により、カリウムが多く含まれる肥料であることが判明しつつあります。
ソイル交換と、今回のイニシャルスティックで、今の状況を改善しようというわけです。
製品紹介
そんなわけで、いつもの円筒形のパッケージを手に取ったのですが、拍子抜けするほど軽く、振ってみるとカラカラと音が鳴る始末。前回の施肥(肥料を施すこと)で使い切ってしまったようです。
そこで、我が人生で2つ目となるイニシャルスティックを、慌ててamazonで購入することとなりました。
お値段約950円なり。コロナ禍で物流が滞ったためなのか? それともアクアリウムブームのあおりを受けたからなのか? 定かではありませんが一時価格が高騰した時があったものの、いまは再び戻りつつある模様です。
なお、ごん太は15年以上前に今はなきアクアショップにて、定価で買った覚えがあります。いい時代になったものです。
パッケージ
まずはいつものごとく、パッケージを紹介していきます。
ビリジアンとライトグリーンのボトル。
そのボトル上部中央には、影付き文字でテトラ イニシャルスティック。右上にはテトラマークがさりげなく配置され、テトラ社ならではの佇まいとなっています。
自身の特色をアピールするかのように、
水草の生長を促進(底砂用スティックタイプ)
と、背景青の白文字で商品名の真下に書き込まれています。
さらに下に目を移しますと、箇条書き。
まとめると……
- 水草の生長を促進
- バクテリアの繁殖を促進
- 鉄分などを供給
- 効果が持続する
水草アクアリストならば吸い寄せられ、思わず手に取ってしまうような、素敵な効果効能が羅列してあります。
左側には、テトラならではの可愛らしいピクトグラム。土壌に肥料分が入ることを示してあるようです。
次いで裏面となります。
赤背景の白抜き文字で テトラ イニシャルスティックと表記された下に、太い黒文字で
水草の生長を長期にわたって促進させる底床用添加剤です。
と、一文で製品紹介がなされています。
真下に肥料としての特色が、細かくずらり列記されています。
こちらも、まとめると以下の通り。
- 水槽セット時に混ぜると、すぐに栄養を与えられる
- 鉄分などを長期供給できる
- 生長を促し、苔への抵抗力をつける
イニシャルスティックの特徴を謳いながら、アクアリスト目線で期待される効果について、述べてあるようです。
裏面中央部には、小さめな文字でぎっしりと使用方法が記されてあります。 こちらも、要点のみ記しておきます。
- 水槽セット時、水1Lにつき1g
- 厚さは5~8cmとなる量の底砂を用意する
- 底砂を2/3入れて、その上にイニシャルスティックを撒く
- さらにその上から1/3を掛けて埋める
- 掘り返さないために水を1/3入れてから水草を植栽
- その後、好みの水位まで上げる
読んでいただければわかる通り、元肥として使われるよう想定された説明文です。
では、追肥の方法はと言いますと、パッケージボトルの左下、「テトラ イニシャルスティックの補充時期」の項目にて……
基本的に年1回、規定量を追加してください。
成分が少なくなったら、スティックを適量、底床へと埋め込んでご使用ください。
(パッケージより抜粋)
と記されています。
追肥として使用しても、なんら問題はないようです。
その右は、水槽のサイズと使用量。
45cm規格水槽なら、水槽セット時には40gということになります。
仮に年1回のソイル交換時のみですと……、
300g÷40g/年=7.5年
ということになります。
良心的を飛び越え、大盤振る舞いな量だと言えるでしょう。
実際の利用にあたって
以上はあくまでパッケージに指示されている利用方法を、そのまま(もしくはまとめて)紹介しているにすぎません。
無論、説明書きの分量通りで施しても、もともとコケが出にくい肥料ですので、大きなトラブルは起こりにくいでしょう。
ですが、肥料は人間が意図して水槽内に持ち込むものです。
規定量よりも少なめからスタートするのがベターでしょう。
肥料分が不足していたら、あとから追加すればいいだけのことです。
もちろん、1つ1つソイルに埋めて追肥するのは、それなりに骨の折れることです。
しかし、コケてしまってはもともこもありません。
実物の紹介
イニシャルスティックは、下のような、直径5mm長さ1~1.5cmほどのペレット状の肥料です。
色は光の加減で変わりますが、茶色~黒色といったところでしょうか?
上でも軽く述べていますが、このパッケージボトル一本で300g。サイズは350ml缶とほぼ同じですから、無骨な見た目通り重さのあるものとなっています。
そのため、水槽内では浮くようなことはありません。
……が、利用する時は、なるべくソイルに埋めましょう。
詳しくは、レビューで述べたいと思います。
そんなこんなで、次の章よりごん太なりの使用感を記していきます。
レビュー
どのような製品にも良い点もあれば、悪い点もあります。
もちろん、テトラ イニシャルスティックも同様です。
しかし、大きな問題点はなく、
アクアリストに長らく愛されている商品であると、
まずは冒頭にて述べておきたいと思います。
効果はある! しかし詳しい成分は不明。
さてこの商品、冒頭でも述べた通り含有成分は鉄とマンガン、さらには有機物(同社webより)が含まれていること以外、明示されていません。先進的なアクアリストの成分分析によりカリウムが多く含まれる肥料だということまで分かってきているようですが、しかし、その全容は未だ不明です。
ごん太としては、含まれているとされる〝有機物〟が何を指しているのか大変気になるところなのですが、現実的にはK+微量要素(+多量要素)の固形肥料だと考えています。
そんなこの肥料の謎については一度棚に上げ、以下よりその効果について話していきます。
まずはこちらをご覧ください。
ずいぶん汚い水草の画像で失礼しました。
茎頂より下の葉は、所々ボロボロになっており、一部コケで覆われています。しかしこの写真で、ご覧いただきたいのは頂上付近です。大きく色鮮やかになっているのが、見て取れるかと思います。
何を隠そう、鮮やかな葉が付いている部位こそ、ソイルを換え、イニシャルスティックを追加した後に伸びた部分です。
ソイルとイニシャルスティックの組み合わせは、水槽内のカリウムを増やして、よく吸収される環境を整える意味合いがあります。
ソイルが寿命に達して硬度が上がりすぎると、その元であるマグネシウムとカルシウム、そしてカリウムの間で、吸収されるときに拮抗阻害が起きてしまいます。
まずは硬度をソイル交換で改善した上で、次いでカリウム肥料を投下しようというワケです。
つまり、
ソイル交換とテトラ イニシャルスティックは相性抜群!
そんな対策を今回してみました。、
水草は声も声も発しなければ、表情にも出ません。欲してる本当の答えを探すために、試行錯誤を繰り返すことも多いです。……なんとドンピシャで当てはまり新芽が出始めたのです。
正直これには、わたしも驚きました。
なんにせよ、定期的なソイル交換とイニシャルスティック。
大切です(自分自身への戒め)。
原因不明の生長ストップ、特にカリウムを添加しているのにカリウム欠乏のような症状で悩まされているのなら、一つの解決指針として覚えておいても、損はないのかもしれません。
根元でじんわりと効果
この肥料は埋めて利用するものです。
液肥とは違い、長期間でじんわりと、根に働きかけます。
もちろん、施す多さや植物の種類次第では、強くもなりますし弱くもなります。例えば当方の水槽では、ロタラにウォーターウィステリアと同じ量を与えると、カリウム過多の茎頂萎縮の症状が出やすくなります。
また、ウォーターウィステリアは、この肥料の有り無しを比べると、利用した方が根張りが強く、早く草姿が大型化する傾向があります。
一口に肥料と言っても、種類や形状、さらには作用する水草の種類で、その効能はまちまちのようです。
固形肥料といえども使いようによっては、濃度の強弱はある程度の自由が利きます。
しかし、一度埋めてしまうと【取り除くのは難しい】ものですから、それは液肥に任せるのが正解かと思われます。
安い! 量めちゃ多い!
アクアリウム歴十数年のごん太、実は今回購入した物が生涯通算2つ目となります。よほど大型のタンクで栽培をしていたり、頻繁に追肥するような環境でない限り、
これ…使い切れんの?
そう思ってしまうでしょう。
それもそのはず、
45cm水槽に擦り切れ一杯40g。60cm規格水槽でも60g。それなのに1パッケージ300g!
減るわけがない。おまけにお値段もたったの900円。
液肥ではないので、第一線を張れるほどの利便性はありませんが、水草に大切な鉄分とカリウムが含まれているともくされる肥料です。
水草水槽をお持ちなら使わない手はないでしょう!
追肥しづらい
このパートから、イニシャルスティックの気になる点の紹介です。
さて、この肥料の最も目につきやすい、残念な点は……
水で短時間に形が崩壊することです。
そのため、慣れないうちは追肥が難しいです。
追肥する際は水に浸けてから、底砂にねじ込むまでの時間との戦いとなることも、ままあります。
また、そのような特徴があるため、パラパラと撒いただけで長期間効果を発揮されません。底床に置いただけではフィルターに吸われたり、換水で飼育水と一緒に排出されてしまうからです。
そのため、1つ1つをピンセットで掴み、水中に入れてソイルの中に埋めることになります。最初のうちは、なかなか根気がいる作業です。
が……、慣れてしまえば造作もないものです。
埋め込む位置の検討をつけ、机の上でパッとピンセットでつまみ、水槽の底床へサッとねじ込む。
そして水草を植えるように斜めからスッと抜く。
もし鉢植え栽培なら、水槽から取り出して埋めればいいわけですし、そうでなくても換水時で、水を半分まで抜いたときに施せばいいわけです。
ここでとある実験をしてみました。
用意したのはイニシャルスティックと水、そしてストップウォッチです。
水に浸かり、ふやけていくこの肥料を観察してみようというわけです。
今回は1分後、3分後、5分後、さらに1時間後の写真を紹介しておきたいと思います。
それでは、実験スタート!
そして5分後。見たところ全体に渡り崩れたようです。
ここでピペットを使って、水流を10秒ほどあてて見ました。
その結果……
表面は崩れているようですが、思った以上に芯が固く、独特なペレット形状はまだまだ保てているようです。ピンセットで摘んでも型崩れはしませんでした。
その後5分経過(実験開始から10分後)しても多少表面の型崩れはあるものの、ピンセットで摘まむことができました。
実験開始から30分後、ピンセットで摘まんでみると、芯は多少残っているものの綺麗に真っ二つにちぎれました。
ただし、複数の実験をしてわかったのですが、肥料が溶ける時間には、わずかな違いがあるようです。
全体的にいえることはおおむね25~40分程度で崩れやすくなることです。
以上の結果から言えるのは、よほどぼやぼやしていない限り、時間に余裕をもってソイルに埋められるのではないでしょうか?
また、すべての肥料を一度底床に撒き、その後埋めるという追肥の方法では時間が足らなさそうです。
やはり、水槽外でピンセットで摘まみ、一気にソイルの中に埋め込むのを、一粒一粒繰り返した方がよさそうです。
最後にこの肥料を水につけたまま、一時間ほど置いて様子を見てみましょう。
――……はい! 1時間たちました。
早速イニシャルスティックを見てみましょう。
すでにペレットの形状がわからぬほどに崩れかけています。
こちらもピペットで水流を吹きかけてみます。
跡形も分からぬほど、サラサラと崩れてしまいました。
そのようなわけでして、この肥料はなるべく水流のあたらぬよう、埋めて使うべきなのでしょう。
以上の特色を理解し把握するまで、何かと四苦八苦するかもしれません。
慣れてしまえば水草栽培の頼りがいのあるパートナーに、必ずやなってくれるでしょう。
追肥タイミングやカリウム濃度を推し測りづらい
まずは追肥のタイミングについて。
パッケージボトル裏の説明では年一回、もしくは成分が少なくなったらと記されてあります。この「成分が少なくなったら」という文言が、この肥料との付き合いの中ではとても大切です。
現状、アクアリウムにおいて、カリウム濃度を〝安価かつ手軽に〟測定することができません。
そのような状況下においては、アクアリスト自身がカリウムをなんとなく察していなければならず、さらに硬度=ソイルの状態にも目配りする必要があります。そして、想像上、もしくは観察から結び付けられた濃度が低下しているようであるなら、追肥することになります。
読みきれないカリウム濃度に夢中になり、わたしのようにソイルの状況をすっかり忘れていると、今回の失敗のようにもなったりします。
また、固形肥料ならではの、さらなる難しさもあります。
底床の中に残留し続けるこの肥料。飼育水にどれだけのカリウム濃度があるのか想像するのは大変難儀します。
大量に換水しても理屈の上では濃度が0にならず、じわじわとソイルの中から、カリウムが溶出してくるのをイメージしなければならないからです。
結果、固形肥料だからとあなどって多く入れ……、
あるいは過大評価して少なく入れ……、
慣れるまでは何かと悩み、扱いに手こずることもあります。
しかし、値段もランニングコストも安いのが取り柄の商品です。全てをお願いするようなことはせず、主軸は濃度を調節しやすい液肥、イニシャルスティックはカリウム濃度の底上げに。そのように捉えていた方が、管理や気持ちも楽になるかと思われます。
総評
話が長くなりつつあるので、簡単に述べておきます。
特徴を端的に言えば……
少々扱いづらくても、価格が安く水草に効果がある。
これこそが、長年アクアリストに愛され続けている理由でしょう。
もちろん、信頼を置けるテトラ社だからというのも一因かと思われます。
というわけで、今回はここまで。
長文読んでいただきありがとうございました。
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