ヤマベチューブを使えないというレアな悩み
どうも、こんにちは。ごん太です。
前回は……
今回のテーマは打って変わって清流釣り。
オイカワやウグイ、さらにはカワムツと呼ばれる清流の小物たちの、釣り餌についてのお話です。
さて、本来この釣りではヤマベチューブ※やサシなど定番の餌があるのですが……
あえて今回は、練り餌(グルテン餌)で釣ってみた!
という話を記していきます。
※正式名はヤマベチューブハエ
わたしが子供のころは、清流魚を釣るなら安くて良くアタリが出て、冷蔵庫に入れずに済む(=母親に叱られない!!)、コイ用やへらぶな用などの練り餌が、子供を含む初心者の定番だったように思います。
しかし現在では、混ぜるタイプの練り餌で清流の小物を釣るという話は、ずいぶんとネット上に少ないように感じられます。
と言いますのも、そもそも清流の小物向けとして、すでに練ってありチューブから出せば手も汚さずに使えるヤマベチューブや多種多様な固形人工釣り餌などが、数多く販売されているからです。わざわざ混ぜなくても良く釣れる餌がある以上、自分で作るタイプの練り餌なんて使うことはごく稀であり、多くの人にはほとんど使う必要性がありません。
が……どうやら、「ごく稀」な事態となったため、せっかくなのでブログ上に事の成り行きをまとめ、さらに後半では実釣を日記テイストで記してみた次第です。
さて、当記事はアクアリウム歴十数年の、「釣り初心者」が書いたものです。
水槽の延長線上にある、自然観察&ゆったりまったり清流釣り路線のお話となっています。
時速100匹とか、自慢の手作り仕掛けとか、そういうプロフェッショナルな話では決してありません。
そのあたりの「ハエ釣り競技」のガチな内容は、釣り系のサイトさんにお任せしたいと思います。悪しからず。
グルテン餌にたどりつくまでの経緯
虫なんて冷蔵庫に入れないでよねっ!
ハエ釣りと言ったらやっぱりサシ。
わたし自身、生きている虫に対する抵抗感はありません。
でも、わたしは主夫。
この手で洗濯物も畳めば、食品の買い物も行き、料理を作ります。そんな手で家事仕事していると家族が知ったら、どんな顔をするでしょう!?
もちろん、冷蔵庫に保管するなどもってのほかです。
「えーなんでー? 釣り用で衛生的なのに?」
と子供のころ、そのように母親に反論した覚えがあります。
しかし、脱走した時のことを思えば、当然のことです。
ハエがなめていたかもしれない牛肉、ウジ虫が這っていたかもしれない魚、あなたは食べたいですか?
万が一でも中身が丸っとダメになることを考えれば、安くて良く釣れ、衛生的に管理されていても、家族の食事を担う者として決して冷蔵庫に入れるわけにはいきません。
それ以外にも重大な理由があります。
そもそも、冷蔵庫は家族みんなが利用する物です。
ブヨブヨと動く素性の知らぬイモムシが冷蔵庫で保存されていると知れば、きっと家族の女性陣は黙っていないでしょう。
多くの場合、どのようなスタイルであれ、釣りを好きになった知られた時点で……
「虫なんて冷蔵庫に入れないでよねっ!」
と強く釘を刺されたことが、一度はあるかと思います。
それを気にも留めず、昆虫やミミズを冷蔵庫に入れた時点で、3食+おやつ抜きになっても文句は言えないでしょう。
ヤマベチューブは形が問題!!
そうなると、やはり人工の餌。清流での練り餌ならヤマベチューブ。深紅の色合いとバニラ臭が甘く香ばしいフレーバーを持っています。これ自体撒き餌としての役割も兼ねており、粘度がありつつも柔らかくてハリから外れやすいのが特徴です。
梅雨や秋雨などの水流が強くなりやすい時期には、毎回付け直さなければならないのが玉に瑕ですが……、
ガッツリ釣れて手も汚さず。定番中のド定番の餌です。
しかし、これは主夫ならではの直観ですが、このチューブは、なにかと危なっかしいその形状で、とても嫌な予感がするのです。
わさび、しょうが、にんにく、からし。
まるっきり同じ構造です。もちろん、常温で保存できるので、冷蔵庫に入れることはありません。それでも
食卓にうっかり置き忘れてしまえば、悲劇が起きてしまう可能性も無きにしも非ず。
いい餌なのだけれども、なるべく避けたいのが主夫たるわたしの本音です。
なお、マルキューからハエ競技用ねりという自分で混ぜるタイプの物も販売されています。
――もし、「ハエ競技用ねり」がわたしの住む街で手に入れば、今回のややこしい話にはならずに済むのですが――
残念ながら近隣に大型店が3つもあるのに、見たことがありません。近年のスタイリッシュなルアーブームに押され、多くのお店では餌釣りコーナーが縮小してしまったのも一因であるようです。
人工の固形餌は練り餌よりアタリが出づらい
そうなるとちょい釣りのエサやワゲットなどの人工の固形餌が候補として上がります。固形なため餌が外れづらく、手返しよく釣りができるのが魅力的。
春から秋にかけてのシーズン中、梅雨や秋雨などで水流が強くなっても、餌持ちが良いために気持ちく竿を振り込めます。
ただ、固いゆえに香りが弱いのか……、
それとも何回も流しているうちに匂いが抜けるのか……、
ヤマベチューブよりアタリが出づらいのが気になる点です。
そのため、餌持ちが良くとも、なるべく頻繁に交換するべき餌だと言えるでしょう。
何度流しても高い確率で竿に残っているので、気持ちよく竿を振り続けたくなりますが、早め早めに付け直せば釣果に繋がるはずです。
それ、釣りに使ったの? 食べ物系は危険性大!
一長一短あり悩ましい餌問題。
いっそ!
……と人間でも食らべれる米粒や魚肉ソーセージ、はたまた小麦粉とみりんで自作練り餌まで。ありとあらゆることを試みました。
しかし、食べ物は家族みんなが口にするものです。
そして、家族全員が釣りに理解があるとは限りません。
「釣りに使った」ソーセージは当然ながら、「これから使う予定」でさえも、怪訝な顔をされることさえあります。
「そんな汚いの冷蔵庫に入れて大丈夫?」
「使ったのを食べさせないでよね?」
「虫とか混ざってるの?」
「ニオイ移らない?」
「――いえ、未開封の人間用魚肉ソーセージなんですが……。」
しかし、家族の食欲と趣味の釣り。どちらが大切かなんて主夫に聞くまでもありません。
釣り餌は釣り餌。食べ物は食べ物。なるべく別々に保管したいものです。
また残念なことに、わたしがよく行く川では釣り人も多く、魚の警戒心が常時MAX。お手軽な米粒やソーセージ、さらにはお手製の練り餌でさえも良く利用されているようで、アタリがほとんどでません。種々の環境さえ合えば積極的に利用したいものですが、わたしの場合は無理のようです。
昔のマブナ釣りを思い出す
そこで思い出したのが、子供のころによくやった野池でのマブナ(ギンブナ)釣り。
わたしはヘラブナ用の練り餌を使っていたのですが、よくジャミ(外道)としてオイカワが掛かっていたの思い出したのです。
同じコイ科だからヘラ用の練り餌でも釣れたのかも?
そう思い出して、とりあえずamazonを漁ってみます。
するとやはり、レビュー欄には外道が掛かりやすいという感想がチラホラと。ヘラ釣りにおいてはオイカワやウグイは邪魔者ですから、それが釣れやすいのは本来ならばよろしくないことです。
しかし、ヘラブナの外道が本命である清流小物釣りなら願ってもないことです。
そこで、さらに詳しくアレコレとリサーチをして検討した結果、
- グルテンα21
- タナゴグルテン
- いもグルテン
清流魚ならフレーバーが強ければ問題なく釣れるようですが、とりあえず上のグルテン3種を購入し、実際に使ってみることとしました。
改めて述べますが、自分で混ぜる練り餌なら水分調節で硬さを調節でき、さらに、グルテン系ならば強い粘り気を持ち合わせているため、餌持ちの良い餌が作れます。
また、乾燥しているので冷蔵庫で保管する必要はなく、独特のパッケージもどう見たって食べ物ではありません。
わたしの場合ですが、清流釣りで使うには好都合です。
グルテン餌の紹介&実際に使ってみて……
ここからは練り餌の紹介と、釣り場で気が付いたことをアレコレと述べていきたいと思います。
共通して言えること
先ほど述べた通りですが……
グルテンであるため、繊維状で強い粘り気を持っているため、餌持ちが良好です。
また、練り餌であるため水加減で硬さも調節できます。寄せるために柔らかくしたり、掛かりをよくするために固くしたり。魚の食いに合わせられる利点があります。
さらに、人工的なフレーバーが付いたものを水でふやかして使うため、同じく人工の固形餌と比べて香りが広まりやすく、魚が寄ってきやすいのも特徴です。
おまけに、冷蔵庫でなくても長期間常温で保存できたり、それとわかるパッケージで誤飲誤食が起こりにくかったりと、何かとイージーに取り扱えます。
餌持ち良く、魚が寄ってきやすく、良く釣れ、保存しやすく、家族も勘違いしづらい。
正直な話、ハエチューブが使えればそれがいいのでしょうが、わたしのような複雑な理由を持っている場合、積極的に使うべき釣り餌です。
しかし、作るのに少々の手間がかかり手も汚れること、さらには固形と比べて針から外れやすく手返しが悪くなるのが欠点。
――もし不慣れなため、餌をつけるのに60秒も掛かるとしたら……。
流れに乗せるため何十回と上流へ振り込むスタイルのこの釣りでは、大きなタイムロスであることは容易に想像ができます。
餌を針に付けるのが難しい、今初めて竿を出す正真正銘の初心者さんなら、ワゲットやちょい釣り食わせなど、固形の餌がいろいろと捗るでしょう。
対して、幾度か釣りをして仕掛けや餌の扱いに慣れているのなら、練り餌がおすすめ。手間は殖えますが、確実にアタリが増え、釣果へとつながるでしょう。
と、全体的な話をした上で、ここから先は、上で登場した3つのグルテン餌の紹介となります。
グルテンα21を使うならさなぎ粉も!
グルテンα21は、その名の通りグルテンを主体としたヘラブナ用の餌です。水を入れて軽く混ぜるとモチっとして粘り気が強くなり、ハリに良く残る優秀さ。仕掛けを川の流れに乗せることが何より大切な清流釣りでは、フレーバーが皆無なのが気になる点ですが、他の餌よりも扱いやすい餌と言えます。
なお、こちらは、わたしが昔マブナ釣りで使っていた餌でもあり、外道でオイカワが掛かった餌でもあります。小学生でも買えるこのお値段と懐かしさいっぱいのこのパッケージ。昔は良く通っていた店の棚にあったので、あれからの年月の流れを思い返すと、一瞬涙が出てきました。
さて、実際に清流の小物たちを狙ってみると、フレーバーなどが一切ついていないことが祟ってか、単品ではなかなかアタリが出づらい印象があります。
しかし餌持ちはバツグンで、付け替えなしでも3~4回仕掛けを振り込めるので、これをなんとかして使わない手はありません。
タナゴグルテンやいもグルテンなどフレーバーが付いている物に混ぜるもよし!
さらには……
さらには、強烈なニオイと集魚力を持つ、「さなぎ粉」と一緒に混ぜて使えば……、
お互いの短所を補い合って一気に第一線級の働きをしてくれます。
わたしは、グルテンα21とさなぎ粉を4:1程度で混ぜて愛用しています。
ヤマベチューブが使えない我が家では、まさしく救世主。
ただし良く魚が釣れるものの、カワムツが掛かりやすいようですので、オイカワやアブラハヤを釣りたいときは、後述の餌をつけるようにしています。
混ぜ物不要! これだけで釣りができるタナゴグルテン
次はタナゴグルテン。
こちらはヘラ用ではなくタナゴ用の餌となります。にんにくフレーバーが配合されており、ポテトチップスコンソメ味な香りが特徴。人間でも思わずよだれが出てくるほどの美味しそうな匂いをもち、これなら清流魚も思わず食い付くのも納得です。
さらには、持ち運びしやすい専用ボトルに入っており、その裏にはタナゴ用のフィッシュメジャーが描かれ、おまけに小さなさじまで付いていたりと、なかなか使い勝手の良い物となっています。
こちらを実際に使ってみると、水を加えた後もその独特なフレーバーは持続し、予想通りの集魚力とアタリの良さです。小さなアブラハヤからオイカワや大きなウグイまで、パクリと食べてくれる実力派です。
難点を言えば少々お値段が張ることと、分量通り作ると若干柔らかいこと。
それでも、1つだけ餌を持っていくのが許されるのなら、わたしはこれを選びます。
グルテンα21にさなぎ粉を混ぜる方法に気が付くまでは、鉄板の餌として活躍してもらいました。なお、フレーバー的にグルテンα21とさなぎ粉の組み合わせよりも、アブラハヤとオイカワが掛かりやすいようです。
サツマイモのいもグルテン。グルテンα21と1:1で!
最後は、サツマイモを配合したいもグルテン。
グルテンα21に比べると粘り気が少なく、そのフレーバーは乾燥している状態でもツンとした蜜のごとく甘い香りを放ち、スイーツ系な餌となっています。
鯉釣りの餌で芋羊羹を使うのだから、コイ科なら甘い物が好きなはずだ! そんな勝手な思い込みで購入してみました。
水を加えるとサツマイモらしく若干の甘い香りを発するいもグルテン。わたしが良くいく川ではアブラハヤとオイカワが好んで食い付いてくれるようです。
しかし、餌持ちがそれほど良くないのが気になるところ。やはりサツマイモを混ぜている分、粘り気が弱いようです。
そこで、グルテンα21。
1:1の割合で混ぜてあげるとちょうど良い粘り気となり、餌持ちが改善され使いやすくなります。
なお、こちらもさなぎ粉を混ぜると、なかなかいい感じ。
わたしは、いもグルテンとグルテンα21とさなぎ粉を、2:2:1の割合で利用しています。
さなぎ粉
練り餌は色々なものが混ぜられます。だからこそ夢が広がります。
みりん、砂糖、オイカワなどコイ科は甘いものが大好き。さらには酒や味噌など発酵している物も独特の香りから集魚力が見込めます。
しかし、糖類を混ぜれば餌は当然、手もベトベトになり、当然竿の持ち手や釣り具ケースやバッグ、さらにはスマートフォンまでベトベトに。
そして、味噌。手はまさしく「生味噌おにぎり」をにぎった後のごとく、ついた香りがなかなか消えません。
そこでさなぎ粉です。
さなぎ粉は強烈な臭気を有しますが、乾燥していますからベトベトすることはありません。
また、たしかに手に匂いが移りますが、味噌のように手に着いたニオイが何時間たっても残ることもありません。それでいて、この量でこのお値段。釣りにどっぷりつかっていない人でも、お手軽に使える集魚剤です。
今回の記事の対象であるオイカワ、ウグイ、カワムツは雑食性であるため、釣り場の魚たちも昆虫を捕食している可能性が高いです。
現にわたしが良くいく川では、夏から秋の朝マズメ・夕マズマはカゲロウが羽化。初秋から晩秋にかけては蚊柱が立っています。そしてそれに呼応するように、ひっきりなしのライズ。
そのため、甘い物や発酵物にも負けず劣らずな集魚力を有していることが多いです。
そして……、これがまぁ! 良く釣れる。
きっと、わたしがよく釣りをする川は、水生昆虫が多いからという理由もあるとは思います。しかし、フレーバーがなくアタリの少なかったグルテンα21に混ぜるだけで、それまで鉄板と信じていたタナゴグルテンを押しのけ、わたしの主力の餌とするほどに強烈な集魚力を持ち合わせています。
なお、さなぎ粉は糸を取り終わったカイコのさなぎを乾燥させて砕いた物。そのニオイは強烈なため、袋ごとジップロックで保存するのをお勧めしたいと思います。
結論:清流釣りに練り餌はありか?
大いにありです。
虫や食材を無理して利用することもなくなります。
家族から文句も言われません。
そもそも、ヤマベチューブやハエ用の競技練り餌があるくらいですから、清流釣りに練り餌はなくてはならないもの。
が……、それらを諸事情で利用できない場合どうするか?
わたしとしては、ヘラブナ用やタナゴ用のグルテン餌の利用をお勧めしたいと思います。
その際には、バラケづらいもの、フレーバーを有している物を選びましょう。さらに、さなぎ粉を追加すれば間違いありません。
あれ?
さなぎ粉? フレーバー? ウグイ?
「九ちゃん」でよくない!?
とうわけで、そもそも、ヤマベチューブが使えない! という人は少数派かと思われますが、夏を迎えたら懐かし系な練り餌「九ちゃん」で、釣りをしてみた記事を投稿してみたいと思います。
グルテン餌で清流小物釣り日記(11月下旬某所にて)
ここからは日記テイストに記していきます。
近隣の川で釣りをしてきましたので、その時の話を綴っていきたいと思います。
なお、仕掛けと餌は以下の通りです。
【利用した餌】
グルテンα21:さなぎこ
→(4:1)
タナゴグルテン
グルテンα21:いもグル:さなぎ粉
→(2:2:1)
また、練り餌をつける機械や、ハリを外す装置、さらにはウェーダー等の専用衣類は利用しておらす、いたってシンプルな道具と仕掛けで釣りをしています。
迫りくる冬の気配と元気なカワムツ
当日の天気は曇りで、最高気温は13℃、最低気温は10℃。11月最終盤でしたが連日暖かい気候が続いたこともあり、水温は15℃。翌週から寒くなるということもあって、今年最後の釣りを予感させる季節となりつつあります。
スタート時刻は14:30。11月終盤の日没はおおむね16:45ごろ。約2時間の釣行となりそうです。
現場に着くとすでにライズが始まっていました。
14時だというのに、雲で太陽が遮られ、薄暗くなり始める河原。慌てて練り餌を作ります。
アユは禁漁を迎え枯葉の多くなる川、水温はまだ暖かくはありますが、通り抜ける風で首元に鳥肌が立ちます。今日は寒ハエ釣りらしく深みを狙ってみることに。
まずはタナを50cmに合わせて、グルテンα21にさなぎ粉を混ぜたものをハリに付け一投目。
北風に流されそうになるも、ハエ竿特有のしなりを生かして振り込み、トウガラウキと7号ガン玉が2個ついた仕掛けを対岸の茂み直下に広がるトロ場へ落とします。
ルアーと同じように警戒感皆無の第一投は、無条件で食い付いてくる生きのいい魚がかかる可能性が大。人が歩く程度の緩やかな流れに乗ったウキが沈みこむのを固唾をのんで待ちます。
目先をわずかにピョコピョコと浮き沈みしながら通り過ぎていくウキ。あまりにも小さなアタリの連続。カブリついていいのやら? 警戒してつついた方がいいのやら? 対応を迷っている魚が多いようで、そうこうしているうちに目指すポイントを通り過ぎていきます。
期待の一投目はハズレか……。
落胆しているとラインがピンと張り、ウキがへたり込むように倒れました。どうやら仕掛けが流せるのはここまでのようです。左手で次の餌の準備をしつつ、竿をゆるりと持ち上げると……。
クンと強い引き、震え始める穂先。バサバサと大きな水しぶきが上がります。
グイっと顎を引っ張られ、罠だと気がついてパニックに陥ったようです。
このままでは、初めから他の魚を散らしてしまうため、竿を持ち体ごと浅瀬へ移動して誘導することに。
弧を描くハエ竿。硬調の渓流から今のこの竿に変えた時はその柔らかさに手間取り悩んだものです。今は、小さな川の妖精を大きな怪魚に変えてくれる、魔法のレンズとも言えるこの竿に夢中。
未だ下流に逃げようとする針先の彼。渓流竿の半分の重さもない頼りないこの竿で無理に寄せたところで、ことさら大きくしなるだけ。いまは耐えるしかありません。
しばらくは腕に力を込めて我慢していると、すっと竿が軽くなりました。抵抗が終わったのです。道糸のさらに先をみると丸い口をアウアグ。黒く輝く魚の顔が水面からのぞかせています。握りしめていた次の餌を放り出し、左手でランディングネットを両足の間で構えます。そして真っ直ぐに引き寄せると、もの言いたげそうに大きな口をあんぐり空けてグレーの背中がするりと吸い込まれていきました。
カワムツです。
青みがかったグレーが美しく、何でも追いかけ良く食べる元気いっぱいな魚。どこにでもいるのに、練り餌はもちろんのこと、管理釣り場用のスプーンにも食い付き将来有望です。
サイズは大きくはありませんでしたが、紅葉も散り始め朝夕の吐息が白くなり始める晩秋。こんなにも小さな命が、わたしの家のすぐ近くで、それも人知れずに健気に生きているなんて……! 畏敬の念しかありません。
小さな体でも引きが強い。ウグイ
それから1時間。
あれよあれよというまにカワムツを11匹釣り上げました。魚たちも警戒し始めたのかアタリが遠のき始めます。
こうなってしまった時、わたしが良く使う手は2つ。撒き餌でおびき寄せるか、それともポイントを移動するかです。
上流もしくは下流に5mも歩けばスレてない魚がいることも多いので後者を採ることも多いのですが、今回は常備している撒き餌「寄せ太郎」を半分に割って魚を寄せることにしました。もう半分は、再び警戒心が強くなるであろう30分後に再投入する算段です。
ウキはより繊細なアタリに合わせて玉ウキ3号へ。オモリはガン玉8号2個の極軽量級に変えて、些細なアタリも逃さない作戦です。
さらに餌もにんにくフレーバーのあるタナゴグルテンに付け替え、寄せ太郎と合わせて香りで攻めてみます。
その一投目。プカプカと流れにのって撒き餌の真上を通りすぎていきます。
このタイプの「玉ウキ」は初心者向けだとなにかと馬鹿にされることも多いですが、8号ガン玉3つも乗せれば沈みそうになるこのナカジマ玉ウキ(3号)は感度抜群。さらにはウキ下を軽くできるので餌も自然にながれ見切られづらく、それでいて自重もあり振り込みやすいと良いことずくめ。おまけに4個入りで300円もしません。なんとまぁ、すばらしい!!
そのウキがふわりと一瞬浮かび上がり、喫水線より下のイエローを見せつつ、ずるずると水中に吸い込まれていきます。
初夏と比べるとはるかに弱い消し込みに、とっさに小さな魚だと感じそーっと丁寧に合わせるも……、途中で根掛かりしたのかと思うほどの引っ掛かりを覚えます。
ゴンッ!!
激しい振動を伝えつつ急に引っ張られ始める竿。細い竿は大きな円を描きブルブル震え、それを支える右手は次第に前のめりなり、竿が〝のされ〟そうになります。慌ててランディングネットに掛けていた左手を放し両手でグリップを握ると、逃げることが叶わないと悟ったのか、相手は下流へと走るのを止め右へ左へと暴れては大きな尾ビレで水面をかき回し始めました。
撒き餌を投げてせっかく集めた魚。そうは言っても、いくら両手で竿を手前に引いても、一向に手繰り寄せられる気配もなく……。
釣り上げた後は、しばらくは魚たちの警戒感は最高潮に達しそうです。
已然トロ場付近から出てこない魚影。フッキングしてから2.3分ほど経過。いまだ魚は上がってきません。
しかし、時折強烈に元居た場所に戻ろうとダッシュして穂先を引っ張りはするものの、それでも魚は少しずつ体力を消耗しているようです。
やがて、尾ひれで大きく水面を叩いたのを最後に、竿ごとを水中へと引っ張り込む力はなくなり、穂先からはブルブルとした振動のみが伝わって来るようになりました。時間の問題のようです。
頃合いをうかがいつつ、意を決して竿を後ろに引き上げるようにして立ててみます。すると全身をウネウネトくねらせな水しぶきをたてながらも、銀に輝く魚体がこちらへとゆっくりと向かってきました。
大人のウグイのようです。
体長は20cm強。
アベレージサイズよりもやや小さいのが、この川のウグイです。
しかしドラグなしで振動が直につたわるのべ竿、さらに細くて軟調なハエ竿の特徴も相まって、その釣り応えは十二分。清流の〝小物〟釣りとは言うものの、道具を選べばその楽しみは大物級です。
歩いて数分のところにある小さな自然。やはり釣りもアクアリウムと同じく、結果重視ではなく、過程や体験(楽しみ)に趣を置いた方が、充実したものになるのかもしれませんね。
名わき役? アブラハヤ
これまでに釣れた魚はカワムツとウグイ。
あれから5~6数匹は釣り上げていますが、そのすべてはカワムツです。
せっかく寒バエ釣りに来たのですから、なんとかしてハエ(オイカワ)を取り込みたいところ。ここで、餌をタナゴグルテンから、いもグルテンを主体としたものへ変更。甘いスイーツ系フレーバーで誘ってみることにしました。
同じく撒き餌さの真上を通すように数投すると……、
玉ウキがヒューンと沈み込んで行きます。
これ見よがしに竿を瞬時に立ててアワセを入れると、強すぎたのか魚が水面から引き抜け、振り子のようにしてこちらへと飛んで来るではありませんか!
釣り糸に吊られ加速しながら、振り子のように向かって来る魚。これをランディングネットに収めることなど、もはや不可能。体をずらして直撃を避けつつ、左手で空を切る道糸を受け止めて手繰り寄せます。そして、そのまま魚をゆっくりとネットの中へ。
ダイブしてきた彼はアブラハヤ。
流れの緩い場所を好み、油のごとく体のぬめりが強い魚です。
その見た目はカワムツに似ていますが、銀色の体に黒のまだらが入るのが特徴。この川ではカワムツに次ぐ多数派で、どちらかと言えば昆虫系のフレーバーよりも、スイーツ系やにんにく臭が好みのようです。
やっと出会えたオイカワ
それから、餌をローテーションさせつつ30分。カワムツはチラホラと釣れるものの、肝心のオイカワは未だ釣れず。
だんだんと周囲が暗くなり、国道の街灯が灯り始めました。今日の日没時刻は16:45頃。
しかし、あいにくの曇天。もう20分もすれば、ウキが見えなくなり釣りができなくなるでしょう。
ここで先ほど半分に割って取っておいた寄せ太郎を投入。これが最後の望みです。
……が、幾度となく仕掛けを流しても、完全に警戒されて魚信はありません。
―今日はもうダメだ。
河原が漆黒の闇に包まれてからでは、道具を収納するのに手間取るだろう――。
仕掛けを流しつつ、最後の一投の時刻を逆算で求め始めると……、
ツンと一瞬沈み込んではすぐさま浮き上がるオレンジの玉ウキ。典型的なオイカワのアタリです。
再び平然と流れに乗って川を下り始めるウキをよそ眼に、駄目元でサッとアワセを入れてみると、コンとした手応え。どうやら無事に針が掛かったようです。
安堵したのもつかの間、騙された相手も必死。パシャンと尾ひれで水面を叩き、猛スピードで下流へと向かっていきます。
ピンと張り詰める道糸、プルッと空で震えるウキ。すばやい動きはあるものの、竿には重さがありません。グッと力を込めれば水中から引き抜けるでしょう。
しかし、今日はスレバリ。暴れる魚を無理に引き水面を叩けば簡単にハリが口から外れることが予想できます。ここは再び、体力が切れるまで少しばかり堪えることに。
すると、先ほどのウグイとは違い一分もしないうちに従順になり、水面をゆらりと引きずられこちらへとやってきます。体を傷つけぬようにランディングネットの中へ優しく招いて、あえなく御用となりました。
オイカワです。
のぞき込むと、夏には虹色に輝いていたはずの縦じま模様跡が、いまは寂し気にしています。
透明感がある可憐な銀の体に直接触れぬよう、手早くかつ丁寧にバーブレスフックをはずして撮影。
すぐさまネットごと川へ沈め、少しばかり休んでもらいます。
余程消耗したためか、しばらくの間はエラを大きく開いては閉じ、ゆらゆらと体を震わせながら網にもたれ掛かっています。やっと出会えた充足感から赤く染まりつつ空の真ん中んをぼんやりと眺めていると、こちらの隙をつくようにしてネットからスッと帰っていきました。
今日も満足感いっぱいで釣りを終えられそうです。
それからさらに15分後。
ウキのオレンジ色ですら水と判別できないほどに暗闇に包まれ始めたこともあり、名残惜しいですが納竿と相成りました。本日の釣果は、ウグイ1匹、オイカワ2匹、アブラハヤ2匹、そしてカワムツ16匹。2時間で合計21匹。
手に残る竿の震え。興奮を拭い取るように土手を抜けて現実へと戻ると、正面には顔を見せ始めた大きな月。夜の主に自然に最大の敬意と感謝を心で表し、白い吐息を出しながら家路へとつくこととしました。
というわけで、今回の話はここまで。
長文読んでいただきありがとうございました。
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