濃度計算の初歩→比例式と希釈の計算
どうも、こんにちは。ごん太です。
今回からときおり、過去に削除した記事の中から、普遍的な物について加筆修正した上で投稿していきます。正直なはなし、このようなモノを書いてもウケは大変によろしくないのですが、誰かのお助けになればと思い掲載することにしました。
今回は、水槽管理に大切な濃度計算の1つ、比例式と希釈についてです。
濃度とはなんぞや? その概要からアクアリウムにおける活用方法(比例式と希釈)まで紹介していきたいと思います。
それでは続きをどうぞ!
濃度という考え方を知っておくことの大切さ
魚は水の中に住んでいるから
「熱帯魚を飼育するにあたり、濃度なんて理解する必要はあるの?」
という声をたま聞くことがあります。
現に魚病薬やカルキ抜き剤といった、本来なら濃度を知るべき商品の多くは、各社工夫を凝らし、煩雑な計算をしなくて利用できるように作られています。
「ならば、濃度なんてを理解する必要なんてない!」
……とも、キッパリ言い切れないのが、この問いの難しさ。
とにもかくにも、熱帯魚の飼育において濃度は大切な概念だと覚えておいてください。なぜなら、
魚は水という液体のなかで活動をする生き物だからです。
そのため、すべての作業において水に溶かす・溶かされているという考え方が現れては消えていきます。濃度についての考え方が理解できていないと、飼育、特に水質の管理が時に立ち行かないことがあるからです。
この記事では、初心者さん向けに簡単な濃度についての概要と、アクアリウムでよく用いる比例式、そして希釈という考え方、方法について説明していきます。
アクアリウムにおける濃度とはなにか?
濃度とは、溶質が溶媒にどれだけの割合で溶けているかということです。
濃度=溶質/溶質+溶媒
「はい! 無理、絶対無理! ここでもう無理!! 割合ならまだしも溶質とか溶媒とか知らないしっ!!」
という人もいるでしょうが、水槽を維持しているなら難しいことではありません。水の中の世界に置き換えればすごく単純な話で、下の例えを見れば一瞬で納得してもらえると思います。
溶質 = 薬類 または 汚れ
溶媒 = 水(水道水・飼育水・カルキ抜きした水など)
難しい言葉は覚えなくても、なんら大丈夫なわけです。
濃度とは言い換えれば、
どれだけ飼育水が汚れているの?
どれだけ飼育水に薬品を溶かすの?
どれだけの水道水にカルキ抜きを溶かすの?
ほら? 単純でしょ?
多くの商品においては、60cm規格水槽ならキャップ半分、20Lにつきサジ1杯、40Lに対して一包……などなど、工夫を凝らした添加方法が採用されているので、その裏に濃度(と計算)が潜んでいるなんて微塵も感じさせないようにできているのです。
しかし、全てアクアリウムにおける重要な作業です。
とりわけ、魚病薬の扱いを間違えれば、水槽に壊滅的なダメージを与えてしまうでしょう。これはつまり、カルキ抜き剤を加えるという簡単な行為の裏には、濃度というまどろっこしい理屈が横たわっていることを意味しています。
逆に言えば、”カルキ抜き剤を添加しすぎた際、何分の1換水を何回繰り返せば規定量にできるのか?”
濃度という考えを味方につければ、柔軟に対処できるようになります。
ということで、濃度の概要についてはこのくらいにして、次はより実践的でアクアリウムにおいてよく利用する希釈という考え方と比例式について。
希釈の意味と比例式
まずは比例式の復習をば……
希釈とは薄めて使うことを意味します。では、具体的にアクアリウムにおいて希釈とはどんな時に使うのでしょうか?
ほとんどの人が手にすることになるであろうカルキ抜き剤。いま、手元にエーハイム4in1を持ってきました。その裏面にはこのように書いてあります。
20Lに対して5ml
これはある総量に対して、これくらいに薄めて使ってください♪という意味で、希釈となります。
ここで思い出してほしいのが「めんつゆ」。文言が似ていませんか? めんつゆの場合は、3倍に希釈してください、2倍に希釈してください、など書いてあります。これらは、出来上がりの総量のうち、めんつゆが1/3含まれるようにすればおいしいですよ♪ という割合を示しています。
カルキ抜き剤も同じです。
カルキをうまく抜くためには……、総量に対して……という部分はめんつゆとまったく同じ。違うのは入れる量が1/3や1/2といった割合ではなく、5mlと数字が出ている点です。ここまで、なんら難しい話はありません。希釈と言いつつ、その行為はめんつゆを準備するのとほぼ同じですから。
もっと具体的な話をしていきましょう。
ここからは、各種水槽の水量をもとに、エーハイム4in1の投入量を計算してみましょう。
(用量は20Lに対して5mlですから)
水量が1/2倍の10Lには、投入量も1/2倍の2.5ml
水量が1.5倍の30Lには、投入量も1.5倍の7.5ml
水量が2倍の40Lには、投入量も2倍の10ml
直感で出てくると思います。
「なんだー、簡単じゃん♪」
ではここで問題です。35Lに対し、何ml添加すればいいのでしょうか?
このように直感で計算できない場合、比例式を用いるのが簡単で検算しやすくお勧めです。
(比例式の解き方)
念のために計算式を書いておきます
20L:5ml = 35L:x
20L × X = 35L × 5ml
20L・x = 175L・ml
x = 175L・ml/20L
x = 8.75ml
あえて単位も数式に入れれば、出てきた単位が何なのか? 迷うことがありません。
繰り返しますが、比例式は式を立てる段階からわかりやすく見直せるので、検算しやすくおすすめです。
比例式についての補足
以下、比例式がわからない人のために一応解説を入れておきます。
まずは、式を立てます。
今回は20Lに対して5mlという希釈が基準となります。
これはつまり、 20L:5ml と式に置き換えることができます。
次は求めたいのは35Lの時。どれだけ入れればいいのでしょうか?
わからない部分や求めたい部分はxとします。
知りたいのは、35Lの時に添加したいカルキ抜き剤の量ですよね?
つまり、35L:x と式に置き換えられます。
そして、この20L:5mlと35L:xの二つの濃度(投入する割合)は同じですから、=で繋げましょう。
20L:5ml = 35L:x という比例式ができました。
式ができたら計算します。
比例式で覚えてほしいポイントは、
外側同士、内側同士の積(=かけること)は等しい(=方程式にする)ことです。
実際にやってみましょう。
20L:5ml = 35L:x
→ 20L × x = 35L × 5ml
比例式の外側の2つ20LとXをかけて左辺に、内側5mlと35Lをかけて右辺に置きました。
あとはこの方程式をxについて解くだけです。
20L・x = 175L・ml
x = 175L・ml/20L
x = 175L・ml/20L
x = 175ml/20
x = 8.75ml
※
x(エックス)と混同しやすいので、途中より×(かける)は・に置き換えてあります。
さて、L・mlという謎の単位が生まれましたね? しかし、分母分子で二つともが消え、首尾よくはmlが残り、8.75mlという数値と単位がセットになって求められました。
というわけで、35Lに対しては8.75ml投入すればいいわけです。
再三繰り返しますが、このように比例式を利用すれば、一見わかりづらい計算もお手の物、おまけに検算のしやすい形で残るので、魚病薬や肥料など絶対に間違えたくない計算にはもってこい。覚えておくだけで貴方のアクアリウムを手広くサポートしてくれるでしょう。
なお、上の式にはありませんでしたが、単位がすべて消えてしまうことがあります。式を立てる段階でxに単位も付けている場合や、値そのものが割合を示しているときに単位が消えます。今一度何を求め計算しているか改めて確認してみましょう。
水草の水上葉に咲いた花 |
希釈の計算:もしもカルキ抜きを入れ過ぎたら?
前置き:現にカルキ抜き剤を入れすぎてしまった!?
文章問題の例文としてカルキ抜き剤の入れすぎを取り上げますが、
もし入れすぎた場合について検索され、ここにたどり着く人がいるかもしれません。ごん太なりの現実的な対処法を書いておきたいと思います。
多くのカルキ抜き剤の主成分は、チオ硫酸ナトリウムというこれ自体ほぼ人体には無害な物質です。
よって、魚にも大きな害はないと類推されます。
そのため、もし、添加量が2倍、3倍程度の間違いなら、とりたてて対処しなくてもよいでしょう。2度入れ程度のミスならわたしも年に1回ほど頻度で発生しており、記憶に残っている限りの場合においては、換水せずとも悪影響はありませんでした。
しかし、予想が付かないのがアクアリウム。
現に魚が苦しがっており本当の緊急事態だというのなら全換水をおすすめします。ただしこちらはpHショックの可能性があるもろ刃の剣。リスクを勘案して、カルキ抜き剤の害>pHショックと考えられるなら、清水の舞台から飛び降りるつもりで換水することになるでしょう。水質変化に弱い淡水エビならなおさらのことです。
現在症状は出てないものの影響が気になるのなら、よりpHショックの起こりづらく安全な点滴換水で対処することをお勧めします。
問題:1/2換水を何回?
さて、ここからが本題で、もしものお話。妄想の世界です。
貴方は10歳の子供と一緒に金魚水槽の水換えをしています。
45cm(総水量約40L)に和金と琉金。夜祭の金魚すくいの和金から始まり、もう一匹は自分のご褒美として金魚屋さんでお迎えした琉金です。気が付けば、ヒラヒラと優雅に揺れる羽衣を纏いつつも、人がくれば全力ダッシュで寄ってくる金魚の二面性にぞっこんな貴方。そんな大切な水槽の水換えです。
今日は子供と二人で協力して水槽をメンテナンスする日。貴方はガラス蓋にこびり付いた水垢を剥がす作業にいそしんでいます。子供にはカルキ抜きの水を作ってもらい、それで水換えしてもらうことにしました。
が、全ての作業を終え、物品をしまうとトラブルが発覚します。
あれだけあったカルキ抜き剤のボトルがすっからかん。子供が計算を間違えて、いつもの10倍量を入れてしまったようなのです。
しかし、魚たちはそんなことを気にもせず優雅に泳いでいます。ここでもし全換水をすれば逆にpHショックの方が気になります。しかし、点滴換水をしようにもメインは上部フィルター。エアレーションは焚いておらずエアチューブがありません。手元にあるのは20L入るバケツのみ。このバケツをめいっぱい使って、1/2換を2時間のをインターバルを開けつつ繰り返すことで、対処することにしました。
さてここで問題です! 何回換水すれば、子供が入れすぎたカルキ抜き剤を入れるべきだった濃度に薄められるでしょうか?
(換水で用いる水は、カルキ抜きをしてあるものとする)
ここで、水槽内のカルキ抜き剤の濃度と1/2換水の回数を一覧にしてみました。
1/2換水=0回
→現在のカルキ抜き剤濃度は10倍
1/2換水=1回 → 1/2 = 水槽全体で濃度は1/2
→現在のカルキ抜き剤濃度は5倍
1/2換水=2回 → 1/2×1/2 = 水槽全体で濃度は1/4
→現在のカルキ抜き剤濃度は2.5倍
1/2換水=3回 → 1/2×1/2×1/2 = 水槽全体で濃度は1/8
→現在のカルキ抜き剤濃度は1.25倍
以上より、1/2換水を3回繰り返さば、問題のない濃度までさがることがお分かりいただけますよね?
2倍希釈を3回、計算式では2×2×2で8倍希釈となります。別の言い方をすれば、水槽全体の濃度は、1/2×1/2×1/2で1/8となりました。
とにもかくにも、
つまり1/2換水をたった3回するだけで、10倍多く入れたカルキ抜き剤の濃度はその1/8(1.25倍)となったのです。
これこそ希釈の強さ。1回こっきりの換水では不可能なこともことも、この方法ならできてしまうのです。
これなら金魚は安全、貴方も安心ですよね?
比例式と希釈で自由自在
希釈はめんつゆで思い出して!
以上のように、濃度と希釈を理解していれば、いざという時に柔軟性と瞬発力が違います。
アクアリウムを趣味にしている人の中には「私、そもそも文系だしー」という人や「俺、生物系だから数学はそこまでは……」という人もおられるとは思います。そんな人にはいつもめんつゆを思い出して! とアドバイスするようにしています。希釈の計算を体感できるからです。
まずは原液で一口。うん! 塩っ辛くて飲めたものではありません。
次いでいつものように3倍に希釈。うどん、そうめん、冷や麦、そば。なんでも合うおいしいおつゆになりました。
これをさらに3倍に希釈してみましょう。かすかに味のある残念な茶色の液体ができあがりましたよね? 原液からは3×3で9倍希釈、つまり1/9に薄めた物だから、塩味も風味も損なわれたのです。
このようにして希釈の繰り返しは、今まで述べた通り、かけ算でもとめることができます。
(そしてその原理がわからなったら、めんつゆで確認することができます)
これさえわかってしまえば、あとはいろいろなことに応用できます。
例えば、上で挙げたように1/2換水でも3回繰り返せば1/8換水したことになりますし、2/3換水でも2/3換水でも2回繰り返せば4/9となり、全量の半分を水換えしたことにほぼ等しくなります。希釈の計算は、重いバケツを持てない人ほど、是非覚えておいてほしい考え方です。
比例式と希釈は計算苦手なアクアリストに味方
その他、高等教育でするような面倒な濃度計算をようする時も確かにあります。が、濃度が指定される場面よほど特殊なことをする時に限られます。
多くのアクアリム用の薬品においては、何リットルに1包、もしくは、何リットルにサジ1杯と割合が指定されていることがほとんど。これは比例式で計算できます。
また、上記の例の様に過剰添加してしまった場合や、主に添加した魚病薬を抜くとき、さらにはいつもの換水では間に合わないほど水が汚れている時など希釈で楽々対応できます。
比例式と希釈は、算数の苦手な人ほど味方に付けておきたい計算法だといえるでしょう。
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