失敗から学ぶ安全な呼び水
この記事は削除した過去記事を編纂・修正したものです。
さて、今回は外部フィルターでは避けて通れない「呼び水」について述べていきたいと思います。おっちょこちょいな性格が災いしてか、おかげさまで(?)今までにおいて最低5回は「水槽の美味しい水」を頂戴したことがあります。
しかし、サイフォンの原理にのっとった、絶対に口の中に水が入らない方法がありますので、この記事ではそれについて紹介していきたいと思います。
なお、サイフォンの原理について詳しい説明はこちらからご覧ください。また、この記事は半分ほど読み物となっております。あしからず。
呼び水誤飲した記憶
クラシックシリーズの呼び水はストロングスタイル
エーハイム2211。わたしが初めて所有したエーハイムクラシックシリーズです。当時は45cm規格よりも大きい水槽を持っておらず、名機2213は購入の候補にすら入りませんでした。
そもそも、クラシックとエコシリーズにはたくさんの違いがあります。
ですから、両者を比べたらきりがありませんが、あえてピックアップするならば、呼び水補助装置の搭載の有無でしょう。エコには呼び水ハンドルという、てこの原理を用いた装置が付いています。
では、クラシックシリーズは?
こちらは口で空気を吸い込み水を引くストロングスタイル。説明書にも堂々と記されているので、あのエーハイムがこんな原始的な方法を!? と驚くこと間違いないでしょう。もちろん、サイフォンの原理が理解できていれば事故は「絶対」に起きませんし、別売りですが専用ポンプもあります。
しかし、初めてのクラシックならば、大事故が起きるかもしれません。そう、わたしのように。
初めてのクラシック、初めての失敗
これは、20年前のとある日のことだ。
初めてのクラシックシリーズ。ダブルタップとやらは実に簡単なものだった。プラスチックの塊ともいえる二連のコック。重量のせいでホースがたわんでしまうのが気がかりだが、フィルターのセットは全て順調に進んだ。
隣で稼働しているエコSを見ると、内部に水が流れ続けているそれはピンと張っている。ならば、2211のたわみも稼働させれば取れるはずだ。物は試し、幸い将来水草水槽になるはずの30cmキューブハイタイプ水槽に入っているのは種水のみ。いくらでも失敗はできる。とにもかくにも、呼び水だ。
ダブルタップから空気を吸えば水が落ちてくるらしい。友人の話を思い出しつつ、まじまじとグレーのパイプを手にとり見つめる。
水を吸うのだから……、当然吸水側のはずだ。まずはこうネジを回して、ダブルタップを分離し、さらにコックを開けば……準備完了だ。
そして、わたしはおもむろに口に当てて……一気に吸い込む!!
スーーーッ……!。ゴボボボ。
サイフォンの原理が動き始めたらしい。だが、途中で止めてしまっては再始動に手間取る。だから、ダメ押しを……?
突然のキンとした胸の痛みに視界が狭まる。思わずホースを口から吐き出すが収まらず、体は防御反応をし始めた。
「ぶはっ! ゲホゲホッ!!」
初めての呼び水は、ひどい結果に終わった。水槽の水が口の中に飛び込んできたのだ。だが、それくらいならまだいい。若さに任せて深呼吸をするがごとく吸気をしたものだから、水は口で留まらず気管にまで侵入してきた。
喉と胸のひどい痛みにこらえつつ、バケツに両手をかけ、うつ伏せとなり咳で外へと押し戻すと、だんだんと意識は冷静さを取り戻し始めた。
しかし、次の不快感が襲ってくる。口の中が薄めた砂糖のような甘さとエビのフレーバー、そして後味の生臭さ。それらが順に押し寄せてきて、鼻腔から離れようとしないのだ。
「おぇっ!」
これはきっとあの子のものだろう。糞をたらし我が物顔で水槽に貼りつくプレコを横目に、わたしは胃からの逆流に耐えつつ、洗面所へと駆け込むのであった。
(ひかりクレストプレコ×キャット×流木×?=×な味) |
……そのあとのことは、よく覚えていません。なぜなら、高熱に腹痛と下痢で寝込んでしまったからです。みなさんも、水槽の水の誤飲にはくれぐれもご注意を。
でも、どうしてこんなことになったのでしょうか?
呼び水の極意:なぜ呼び水が口の中に入ってくるのか?
そもそも、サイフォンの原理とは水槽Aと水槽Bが水を満たしたホースでつながっているとき、重力により水面は常に等しくなるというものです。
ここで、水槽Aに魚を入れて飼育水槽とし、水槽Bは密封して下に置き、外部フィルターと見立てて原理について考えてみます。
まず、双方をつなぐ水で満たされたホース、これは吸水パイプが当てはまります。飼育水槽と外部フィルターをつなげており、重力が作用した際には、ここを水が流れて双方の水面が等しくなります。
では、その水面はどこにあるのでしょうか?
一目でわかる飼育水槽はさておき、外部フィルターの水面は、実は排水パイプにあります。気になる人は一度電源を止めてみてください。パイプがU字になり壁を水槽のフチを乗り越える手前で、小さな直径1cmの水面ができているはずです。これが外部フィルターの水面です。サイフォンの原理では、これと飼育水槽の水面は必ず同じ高さにあると示されています。言い換えれば、モーターなどでエネルギーを加えない限り、絶対にこれより水は高く上がりません。
となれば、どこに口をつけて吸い込めばいいか、もうお分かりですよね?
呼び水は、水槽の一番高い水位と同じ水位までしか水が上がりません。ならば、排水パイプの先端から吸い込めばいいのです。
とにもかくにも、ここまで読み物主体で書きましたので、最後に「手順」を綴っておきたいと思います。
口を使った安全な呼び水の方法
キスゴムより排水パイプを取り外す
まずは、外部フィルターの電源がOFFになっていること、ダブルタップが全て開いていることを確認します。
次いで、排水パイプに口を付けるのですが、設置場所やレイアウトによっては届かない可能性があります。これではろくに吸い込めず、サイフォンの原理を作れません。そのため、ホースを少々伸ばします。
といっても、パワーヘッドに接続されたままの状態で、排水パイプとホースをキスゴムから取り外すだけ。よほどパツンパツンな長さにしていない限り、排水パイプを引けばだらりとたるんだホースが張り、排水パイプが10cmほど上がるはずです。なお、この時に強く引っ張りすぎると、排水パイプがホースから外れてしまうのでご注意を。
え? ホースが短すぎてそんな余裕がない?
そのような時は、排水パイプの先端にさらにホースなどを付けて延長しましょう。道具が1つ増えてしまいますが、10cmも切れ端があれば事足りますので、ホースの切れ端は捨てずに取っておきましょう。それすらない時は、ホームセンターに買いに行きましょう。径を確認する必要がありますが、メートル単位で安く手に入るはずです。
とにもかくにも、取り外したパイプを軽く引っ張り、水面よりも高い位置に持っていき、直接自分の口をつけます。
排水口から息を吸う
さぁ、準備は整いました! あとは強めに一瞬フッと息を吸い込むだけ。
そうしたら、すぐにパイプから口を離しましょう。
外部フィルターは、言うなれば1つの大きなストローです。排水パイプで空気を吸い込めば、フィルターケース内が陰圧になるので、給水パイプから水が引っ張られ、サイフォンの原理がスタートします。いわゆる呼び水と呼ばれるものです。
ゴポポという音とともに水が落ちはじめ、やがて水が落ちるザパーという音が聞こえるようになります。それまでには必ず口を外しておきましょう。
飼育水槽の誤飲は高いリスクが伴います。意味もなくいつまでも咥えるのはおすすめできません。
最後にサイフォンの原理によって、飼育水槽と排水パイプの水面が同じになり、落水が止まるのを見届けてから、電源をオンにすれば作業完了です。
というわけで、今回はここまで。
長文読んでいただき、ありがとうございました。
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