なぜ水流を弱めるのか?
今回は、ナチュラルフローパイプやリリィパイプなど、水流を弱める排水アクセサリの必要性について記していきたいと思います。
なお、この記事は削除した過去記事を修正したものです。悪しからず。
水流と黒ひげ苔
近年の排水アクセサリの進化には目を見張るものがあります。
プラスチックにガラス、水流や水圧を弱めるだけでなく、エアレーションとして機能するものまで、実に多種多様な製品であふれています。ほんの20年前まではエーハイムのディフューザーやシャワーパイプぐらいしかない時代でしたから、つくづくその進歩には感心させられます。この目覚ましい進化の背景には、水草アクアリウムの認知度が向上したこと、それに伴い外部フィルターが普及したことがあるに違いありません。言うなれば、多くの方が排水アクセサリを利用するようになったとも言えるでしょう。
なぜ、人々は水流を弱めるのでしょうか。みんなが大嫌いな黒ひげ苔が好むからです。そのため、水草栽培では避けるべきものだと考えられています。
もし、時間があるのなら、ご自身の水槽で黒ひげ苔を探してみてください。生えているところは、きっと水の勢いが局所的に強い場所であったり、水の流れの境界になっている部分のはずです。例えば、前者はシャワーパイプや排水口、給水ストレーナーやエアストーンなど、後者はエアチューブや水温計・ヒーターなどのコードで見受けられるでしょう。
では、水草は?
植物の葉は平たく薄く、飛行機の翼のような形をしています。実際、その外縁部は水の流れを分ける境界となっており、事実ほとんどの水草において黒ひげ苔の好発部位となっています。葉は柔らかい有機物ですから、苔にとってこれほど取りつくのに都合のよいものはありません。
黒ひげ苔の対処方法としての排水アクセサリ
ここで、黒ひげ苔の対処方法について考えてみましょう。被害の多い有茎草は器具とは違い大変柔らかいものですから、スポンジでごしごしと擦るようなことはできれば避けたいものです。しかし、素手で取ろうとしたり、ピンセットで摘まもうとすれば、強固に活着しているため葉そのものが破けてしまうこともあります。それほどデリケートなものなのです。
となれば、黒ひげコケを駆除できる生物兵器! と、いきたいところですが、そうもいかないのが現状です。例えば、サイアミーズ・フライングフォックスは黒ひげ苔を食べてくれますが、最大10cmほどまで成長すると言われています。基本的に水草水槽は観賞魚は小型魚かつごく少数で、徹底的に富栄養化を回避するものですから、おいそれと中型魚を入れるわけにはいきません。残念ながら、葉ごとトリミングしない限り、黒ひげ苔を「物理的」に除去する方法がないのが現状です。
もちろん、木酢液で化学的に苔を変性させる方法もあります。しかし、これはアヌビアスやミクロソリウムなどのように葉が厚くクチクラ層が丈夫な植物に対してのみ実施できる方法であり、ノウハウなく厚みのない陽性植物に用いるのは無謀だと言えるでしょう。実際に少しでも濃度が強ければ、葉は溶けるように腐り落ちていきますので、強い探求心を持つ人でない限り、おすすめはできません。
以上のような理由があるため、水流や水圧を弱め、黒ひげ苔が繁殖しにくい環境を整えるのが現在主流の対策方法となっています。しかし、ダブルコックなどで流量そのものを絞ってしまうと、水槽内の対流が弱まり溶存酸素濃度が低下し、生体に悪影響が出ることもあります。そのため、量を確保しつつ勢いを抑える必要があり、それをかなえるのがエーハイムのナチュラルフローパイプやADAのリリィパイプなど、水草用の排水アクセサリというわけです。
今回はここまで。
読んでいただき、ありがとうございました。
0 件のコメント:
コメントを投稿