時として失敗から得た教訓も見直しが必要
今回も20年前の失敗談。プレコ水槽のエーハイム2213にサブフィルターを取り付けてみたところ、見事に詰まってしまったという話を綴っていきたいと思います。
プレコ水槽とろ過の強化
今年もあと1ヵ月となったころ、部屋のライトを消して忍び足で目の前の60cm規格水槽をのぞき込む。水槽の中央には、幅40cm以上の巨大な山型をした流木が鎮座している。その頂上には何事もなかったかのように、支配者のオーラを放ちながらスイカがとまっていた。
憧れのプレコライフはこの子から始まり、一気に膨らんだ。5~6cmのグリーンロイヤルプレコを30cmキューブにも満たない水槽に迎え入れたかと思えば、彼らの形と生態に魅了され、気が付けば60cm規格水槽を準備していたのだ。情報収集と物品の購入に勤しみ、桜の葉が落ち秋が深まるころに実行に移した。強い水流、強力なろ過を重んじて外部フィルターを2台併用した上で、カミハタSEIOという水流専用のものを設置。流木は水槽のハイライトともなる幅45cm以上のものを1つ置き、左右の端にはシェルター代わりの小さなものを組んだ。しかし、このようにどれだけ道具を購入しても、環境が変わったストレスで、3匹は食事する姿さえ見せてくれることがなく、常に不安にさらされる日々だった。
だが、夜虫の声も無くなる頃、ストレスで胃が痛い日々もすぐに終焉へと向かう。夜な夜なガシガシという流木を食む音が聞こえ続け、ついには朝一番の掃除が必要なほど糞の量が増えたからだ。2匹目にお迎えしたタイガープレコと違い、最初のグリーンロイヤルと3匹目のプラチナロイヤルは餌も好きだが、とにかく流木が大好物で、部屋の電気を落とせばスッと水槽の奥から表れて、ガリガリと食べ続けるのだ。そして、朝を迎える頃にはガーネットサンドの上に緑色と茶色で縞模様となった糞のとぐろがずらりと並んでいる。これをプロホースで取り除き、学校へ行くのが日課となっていた。しかしそれでも、フィルターの通水性は1日ごとに悪化する。掃除直後には音を立てて流れていた水が、1週間もたてばパイプ周りに巻き込まれるエアがなければ分からないほどまで弱くなる。
となれば、気になる濾過能力で、フルーバル304とエーハイム2213の並列稼働では、日に日に増す排泄物を前にして、将来的に性能が不足するのが目に見えている。そこで思いついたのが、利用していなかった2233だ。インペラとスピンドルを取り払い、2213の吸水部分とホースで直結しサブフィルター化するのだ。これなら呼び水も簡単になるし、3段のろ材コンテナを有しているため、さまざまなものを使いやすい。かくして、水槽台にはフィルターケースが3つも並ぶことになった。
思いもよらぬトラブル
が、どうにも水がよろしくない!
最後の一枚になったばかりのカレンダー、その下にある部屋の明かりのスイッチを入れると、彼らは黒い影になってヒュンと流木の裏へと消えていった。
鼻を直接近づけて臭いを嗅ぐと、ほのかにテルペノイドに似た香りがしており、水面の四隅にわずかに泡がたまっている。ろ過が不調のサインだ。踵を返してデスクに向かい、試薬を手に取り水質をチェックしてみるのだが、アンモニア、亜硝酸ともに検出されず原因不明だ。となれば硝酸の過多だろうと、今度は試験紙を持ち出してみるのだが、こちらも正常の範囲内で迷宮入りとなった。
では、プレコはどうだろうか? もし水質に問題があれば、彼にも大きな異変があるはずだ。驚くプレコをよそに、水槽の上からつぶさに観察してみるのだが、ヒレや体表は正常であり、呼吸数や平衡感覚にも問題が見られない。当然、ジャンプや水槽の上端に陣取るなどの異常行動があるはずもなく、小さな煙こそ臭えど大火には至っていないようだ。今は、とりあえず換水して様子を見るしかなさそうだ。
しかし、水を抜くと思いのほか早く見つかった。先日直列にしたばかりの2213から水が出ていないのだ。水面に向かう水柱がある場所からは、ピチョンピチョンとしずくが垂れており、一目で通水が停止していることがわかる。無論、電源コードを見ても抜けておらず、となればケースの中が問題に違いない。
まずは、パワーヘッドのある2213を開いてみる。しかし、こちらには大きな問題はないようだ。強いて言えば、タブレットで緑色に染まっているぐらい。ならば、2233はどうだろうか? ヘッドを開けると異変はすぐに見て取れた。純白のろ材コンテナに茶色の何かがこびり付いていたからだ。そのフタを開いてみると、ようやく原因が分かった。セラミックのろ材とろ材の隙間がこの茶色で所せましと埋め尽くされていたからだ。これを指に取りよく見てみると、……どうやらプレコの糞に含まれる木くずのようである。これが詰まって停止状態に陥っていたに違いない。
ならば、今動いているフルーバル304はどうなっている!?
こちらは構造的にどの外部フィルターでも見られないほど物理ろ過が長大であり、難なく木くずをさばけているようであった。とにもかくにも、304がなければ、今頃この水槽は大変なことになっていただろう。やはり、1台のパワーヘッドで外部フィルターと2台を動かすには無理がある。たしかにろ過性能は2倍だが、たまるゴミも2倍になるため詰まりやすいのだ。これ以来、わたしは直列より並列稼働派となった。
(当時のエーハイム2233は今も手元にある) |
得た教訓は本当に正しいのか?
さて、話は一気に現在へとジャンプします。
過去記事の修正で、昔の自分の相対し、「直列は詰まりやすい」というこの失敗の教訓を見つめなおす機会があったからです。
というのは、ひょんなことから、サブフィルター2213と2222を直列につないで5年以上続けていますが、以前のようなトラブルは起きる気配すらないからです。もちろん、水質の悪化や酸欠などの問題も出たことさえありません。となれば、あの20年前の失敗はいったい何であったのだろうと思い、再考することにしました。
結論が出るのに、そう長くはかかりませんでした。結局は適材適所だということです。プレコ水槽のように非水溶性のゴミが大量に出る環境では、それらは大きな通水の抵抗となります。そのため、サブフィルターと外部フィルターの組み合わせでは、ろ過の経路が長くなり、どこかで詰まれば簡単に通水が止まるでしょう。プレコ水槽にはやはり並列稼働が良いのです。
では、水草水槽ではどうでしょうか? ゴミはほとんど出ませんし、仮に出たとしてもソイルの塵ぐらいなもので、すべてがウールマットへとたまったとしても水が止まるようなことはほとんどありません。にもかかわらず、この水槽で外部フィルターを並列稼働させれば、今度は強すぎる水流が黒ひげ苔という問題を生み出します。結局は、わたしの使い方が悪かったのだと帰結したのです。
以上のような思考過程を踏まえ、最近は直列も捨てたものではないと考えを改めるようになりました。とりわけ、並列から直列に変更しただけで、黒ひげ苔の成長スピードは半分以下になるという恩恵がありましたから、それを完全に否定するわけにはいかないと思い、このような文書を綴ることにしたのです。
(ケース破損の部品取りにするつもりが) |
いつか、失敗に感謝するときも来る
さて、今回も20年前の失敗でした。この時期の話が多いのは、当時のわたしは右も左もわからないアクア初心者だったからです。今思い返せば「どうして、そんなことをしたんだい?」と真顔で問い詰めたくなる話ばかり。
しかし、この趣味では知識よりも経験がものを言う場面が数多く、いくら言葉や文字で情報を仕入れたとしても、きっと同じようなミスをしていたに違いないでしょう。
とにもかくにも、大きな被害はなく、このように20年越しで話のネタにできていますから、過去の失敗には感謝せねばなりません、……なんて書けるのも歳を積み重ねたかもしれませんが。
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