時には肩の力を抜くことも大切です
今回は、水草がうまく栽培できなかったときにはどうするべきか、という話を過去の失敗談を絡めて述べていきたいと思います。
時には、水草アクアはリラクゼーションになりますが、何かと気を使うことが多いのもまた事実です。慣れないうちは、取り返しのつかない失敗が生まれる頻度も高く、それが嫌で何もかもあきらめてしまうこともありがちです。
そんなお疲れ気味なアクアリストに向けて書いてみました。
リベンジをしたい!
「ヘアグラスを水槽に植え付けたのは、いつのことだっただろうか」
年末の大掃除道具を買いにやってきたホームセンターで、人工水草の展示水槽を眺めるうちについつい口に出てしまい、独り言が聞かれていないかと慌てて左右を見渡した。
再びアクアリウムという趣味を始めたのは、大きなスーパーが偶然昔通った熱帯魚の横にできたからで、店の看板を見るうちにプレコに未だ惹かれている心を感じ取ったからだ。しかし、気が付けばいつのまにか水草にも夢中になり、アヌビアスやミクロソリウムといった陰性植物や、ウォーターウィステリアやハイグロフィラというような有茎草などを栽培し成功を重ねてきた。まるで、過去の失敗を取り戻すかのように。
わたしには夢がある。ヘアーグラスの草原だ。しかし、あの時は何も知らなかったため、光量、肥料、水流、さらには生体の数まで、何もかもが多すぎた。ゆえに、穂先が水流でなびくはずの青い草原は黒く染まり、植え付けたばかりの水草を自分の手で引き抜くという悪夢を見た。
だが、今は違う。失意のうちに終わった水草水槽は過去のもの、何種類もの水草を栽培し、すべてうまくできたではないか。もちろん、度重なるショップ探訪で栽培のイメージもばっちりつかめている。高光量に肥沃な土、さらに貧栄養の水にコケ取り生体、諸条件を整えて再チャレンジをすれば、成功するのではないだろうか。
とにかく、やるなら今だ! とスマホでチャームを見ると、あれほどまでに高額だったヘアーグラスが、なんともこなれた値段になっているではないか! これ僥倖なりとばかりに注文してしまうのであった。
(過去記事より) |
再びの黒ひげ
だが、黒ひげたちは、どこからともなくやってきた。
100均のフルーツ皿に植え込み、2週間固唾を飲んで見守ったが、調子を落とし色褪せた水上葉に散見されるようになったのだ。やはり悲劇は繰り返されるのかと一度は落胆したのだが、ガラス越しに覗き込むとライトグリーンの新芽が出ているではないか。よくよく思い返せば、黒ひげ苔たちの成長速度は10年前と比べて遥かに遅く、地獄が瞬く間に広がる気配はない。レシートの日付とカレンダーを突き合わせると、まだまだ時間的な猶予が多く残されている。これは、知識や経験を積み重ね栽培条件を整えたたまものであり、前回立ちはだかったハードルでも、今なら飛び越えられるのかもしれない。
しかし、それほどヘアーグラスは甘くない。その1ヵ月後、今度は元気であるはずの水中葉までもが餌食になってしまった。当初困惑こそしたが、こちらはすでにヤツらの駆逐方法を知っている。この鋭いハサミで、葉もろとも取り除いてしまえばいいのである。
そうして、切っては生え、コケては切る日々が始まったのだが、永遠に続くと思われるヘアーグラスとの日々は突然の終焉を迎える。数度繰り返すうちにとうとう音を上げ、切り株を残して、新芽を出さなくなってしまったのだ。
以上は、過去記事にも記したことがあるヘアーグラスにまつわる失敗談です。
まわり道をするということ
ではなぜ、新芽がなくなってしまったのでしょうか?
そもそも「葉」というものは、水草のエネルギー生産工場だからです。それを苔が付いたからと言って所かまわず切ってしまうのは、工場を重機で打ち壊すようなもので、栄養不足になるのは火を見るよりも明らかです。
では、黒ひげの処理はどうするべきだったのでしょうか?
たしかに、下葉が侵されやすい有茎草なら、辛抱強く待ったうえで元気に育った茎頂部だけ差し戻しを行えば、黒ひげ苔であろうが駆除できます。また、差し戻しが不向きな単子葉類の水草では、苔の付いた部分だけカットして対応することもあります。カットされた葉のみ大きく調子を崩しますが、全体の感染源から倍々ゲームで増えることを考えれば、妥当な手段だと言えるでしょう。
とはいえ、ヘアグラスは差し戻しが不可能であり、1つ1つの葉が極小であるこの水草では、上で述べた対処方法が実質不可能。となれば、木酢液の利用を……と言いたいところですが、それですら行き詰まることもありますし、根拠を挙げてしらみつぶしに対策をしてもまったくダメなときもあります。ですので、今回はもっと別の方法を述べておきたいと思います。
簡単なことです。難易度の低い別の水草に植え替えればよいのです。答えになっていないとお叱りを受けるかもしれませんが、何事も急がば回れです。成功経験を積み重ね、造詣を深めれば、いつの間にかハードルが飛べるようになっていることが、長い人生ではよくあることだからです。
どんな植物でも、深く知れば何ものにも負けない美しさを持っています。例えばススキだって国道沿いの空き地に生えていれば雑草にしか思えませんが、人里離れた河原で月明かりに照らされている美しさを見れば、なぜ昔の人が十五夜の満月と合わせたのか分かるはずです。そうして、さまざまな水草を育て、虜となることで、技と知識は深まるのだとわたしは信じています。だから、今回いままでとは少し違った答えを紹介してみました。
(その後、栽培は軌道に乗るが……) |
癒しを求めて
さて、このような記事を書いたのには、理由があります。
そもそも、苔が付かないように栽培することこそ、最高のコケ対策です。これはネット上で散見され、もちろん当サイトでもよく使う文言となっていますが、真に受けて愚直に諸条件を探るのは、深い森の中を地図なしでさまよい続けるようなものです。なぜなら、光量、肥料、CO2、硬度など、調整できる要素は多岐にわたるからです。
もっとも、それこそ水草栽培の奥深さであり楽しみでもあるのですが、水草と正面から対峙することは心理的な負担が大きく、本来の目的であるはずのリラクゼーションから大きく外れたものとなっています。その結果が、過去の私のように失敗して水草水槽そのものをあきらめることになってしまったら、元も子もありません。
そのため、行き詰まったら他の水草に目を移してほしいという思いで、この記事を作成した次第です。楽しみながら、リラックスしながら、栽培の腕を上げていきましょう。
というわけで、今回はここまで。
長文読んでいただき、ありがとうございました。
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