禍を転じて福と為すミクロソリウム・ウェンディロフが増えすぎて困った話
ミクロソリウムは極めて栽培しやすい水草の1つ
今回は10年以上前に経験した、わたしの中でウェンディロフを語る上で外せない出来事を読み物テイストで記していきたいと思います。
なお、当記事は過去記事より削除されたパートを修正し書き直したものとなっております。結末を知っている方は悪しからず。
怪しい特売
水換えが終わったとある午後、バスを乗り継ぎ最近できた国道沿いのアクアショップのチェーン店を目指す。餌やカルキ抜きはおろか、生体や水草まで何もかもが安く手に入るその店で、わたしはいつの間にか全てを済ませるようになっていた。
自動ドアが開くとショップらしい湿気が体にまとわりつく。それを早足で乗り越えて探すものはセールで売り出し中の棚が並ぶエリア、先ほどの水換えでカルキ抜きを使い切ってしまったのだ。早速手に取りカゴにに入れる。だが、好奇心はそれだけでは収まらない。せっかく来たのだからと1つ1つの商品を舐めるように見ていると、不意にワゴン販売の特売コーナーに出くわした。
「特売」と垂れ幕が掛かった什器の上には透明なビニール袋が連なっている。別の店舗で袋売りのプレコやポリプテルスの稚魚を見たことがあり、悪趣味だと近寄らないようにしていたのだが、どうやら小動物を無慈悲な方法で陳列しているわけではなさそうだ。1つ手に取ってみるとこれは流木付きのアヌビアス・ナナのようで、赤マジックで価格がデカデカと書いてある。裏にある水草水槽のそれと比べてみるとずいぶんと割り引かれているようだ。続けざまに隣の袋をのぞくと、こちらはポットに植えられたミクロソリウム・ウェンディロフ。以前から気になった水草ではあるが、付け値に押し切られる形で思わずカゴのなかへ。
しかし、同じ商品をわざわざ横に並べて売るだろうか。どことなく薄気味悪い感じがあるが、幸い中身をよく観察できたので、葉が1番大きそうなものをワンコインにも満たない価格で2株を連れて帰ることにした。
(当時のミクロソリウムは今も健在) |
困るくらいに良く増える
案の定悪い予感は的中する。いざ袋から取り出し、包んであったウールを外すと、大きな1株だと思われていたものは、なんと小さなサイズの2株が1ポットに無理やり押し込まれていたのだ。
もしかして移動中に折れたかと思い、葉や茎を丹念に調べてみるのだが、この2つの株がもともと1つであったという痕跡は見つからない。つまり、最初から意図的にこのような形状で販売されていたということになる。落ち込んだ気持ちでもう1つの袋を開けると、しかし予想が外れる。こちらは見かけ通りのサイズが1株。なんとも理解不能な事態となってしまった。
もしかしたら、売る側もどれが訳アリ品か見分けが付かなかったため、安値で売らざるを得なかったのかもしれない。とにもかくにも、残念な気持ちになってしまった。
しかし、半年たつと嬉しい悲鳴を上げるようになった。次々と子株が生まれるようになったのだ。そもそもミクロソリウムは栽培条件が緩い水草だ。たしかに、生長し大きな姿にするには時間がかかるものの、育成のハードルは極めて低い。少し強めの水草用ライトさえあれば、肥料や水質などで気をもむことなく容易に生長してくれる。もちろん、CO2添加だって不要。大昔はただのエアレーションで代用する人がいるくらいだで、本格的なボンベ式とまでいかなくても、発酵式を準備できれば十分だろう。そのような水草なのに、……あの一件のせいで2株→3株の本来の1.5倍増しだ。
落胆した過去などどこ吹く風、次第に子株の行き先で手に負えなくなった。最初は律義に流木に着けていたものの、だんだんと面倒になり溶岩石に貼り付けるようになり、ときにそのまま水に浮かせることもあった。やがて季節一回りするころにはマツモが支配していたわが家の水槽は、ミクロソリウムの楽園が生まれた。
どうやら、増やしすぎてしまったようだ。
育てる楽しさを感じてほしい
……というのが10年前の話です。その後、ほとんどは捨てることになりましたが、なによりこの水草には育てる楽しさがあります。簡単に増える割には、生長が遅くトリミングも2ヶ月に1回、それでいて奇麗な気泡が上がり見とれるような美しさを持つ。これほどアクアリストの方に向いている水草は果たしてあるでしょうか。
というわけで、今回の話はここまで。
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