あの店の思い出
つい最近いぶきエアストーンの記事を修正したばかりですので、今回はそれにまつわる思い出を記しておきたいと思います。
さて昨年の年末、久々に都心へと行きました。本来の目的は忘年会だったのですが、明治神宮や代々木公園、さらには新宿御苑とアウトドア派の人でも楽しめるスポットが数多くあります。そして、その道中に必ず行く店があるのですが……。そのお話を「読み物」として投稿してみたいと思います。
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(カワウがやってくる季節) |
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夜の街にある清らかなオアシス
さよならは突然に
空っ風の吹く靖国街道から湿度でムッとした高い地下へと降り、さらに年末の人ごみをかき分けつつ目当ての店へと進むと、都心のオアシスともいえるその店があるはずだが……、その姿はもうなく、残念ながら隣の店の敷地となっていた。呆然としつつも白い天井を見上げると、初めてここに来た20年前のことを思い浮かんできた。
初めて知る
20年前のある夏、冷房の効いた地下道を歩く。都心だということもあってか、無機質な通路の中にアパレルショップが立ち並び、若い女性たちがひっきりなしに行き来している。田舎のそれしかしらない青年にとっては、ギャップが新鮮に感じられた。
だが、角を曲がると雰囲気は一変した。衣料品店はランジェリーショップに姿を変え、直視できないほどの色っぽい品物が通路の左右に並んでいる。その隣には艶やかなウィッグ店が並び、通りを歩く女たちは露出の高い服で不自然なほどに着飾っている。夜の街で有名なこの地域の現実が零れ落ちているようで、無垢な青年はただ目を下にやるしかない。初めて浴びせられたひどく爛れた雰囲気にいてはならないように感じられ、足を早めるとやがて一角の奥から嗅ぎなれた空気がやってきて安堵する。甘ったるい中にほのかにある水の香り、この先に間違いなく熱帯魚ショップがあるようだ。
アクアの力
そこは、明るく照らされた水草で場違いなほどの清涼感が漏れ出ていた。メタハラで照らされた水草は青々と生い茂り、光は壁に水影を作り出し、大自然でしか味わえないはずの神々しいハーモニーを生み出していた。清らかな雰囲気に吸い込まれるようにして、店の中は早上がりのサラリーマンや、母親に連れられた子供が熱心に水槽にかぶりついている。その店の前を通り過ぎていくのは、異常に体を密着させた違和感満載のカップルたち。水が空気を中和し、夜の街の地下とは思えないほどのさわやかさを生み出しているようだった。
青年はあっけにとられつつも、気になる品がここにあるという記録を残すため紙の切れ端にメモしていき、やがてそれがいっぱいになるころに、今日の目的の品を見つけたのだった。
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アクアリウムグッズ事情の今昔
通販のない時代
さて、今でこそネット通販で簡単に購入できますが、当時はそういった情報やAmazonがない時代でした。若い人から「スマホがなかった時代、どうやって待ち合わせをしていたの?」という話をよく持ちかけられるのですが、今思い返せば笑ってしまうようなお粗末な思い出ばかりです。そして、趣味の品のお買い物はそれよりももっとひどい状況でした。
ホームセンターに行き、ペットショップを巡り、さらに地元の熱帯魚店でも探す。それでも欲しいものが手に入らないということばかりで、泣く泣く代用品を手に取ることが日常茶飯事でした。それでもどうしても欲しい時はどうするか? 上に記した通り公共交通機関を利用して、県庁所在地などにある大型店へと足を延ばさざるを得なかったのです。今のご時世で考えればかなり大袈裟に思えますが、当時は本当にこれしかなかったのです。
楽しかった記憶
20年前のあの夏、そうまでしてこの店にやってきたのは、いぶきエアストーンのためでした。今でこそエアストーンの高品質はよくなりましたが、昔は派手な色が付いた砂利を固めたようなものも多く、出てくるエアは大きく、触ればポロポロと崩れてくる始末。エアが細かく、高品質で高耐久ないぶきエアストーンは憧れの存在だったのです。そして残念なことに、このストーンは地方のアクアショップには置いておらず、泣く泣く都心までやってきたのでした。
しかし、時間とお金ばかり食うこの探訪が苦痛だったかといえば、さにあらず、たった1つのストーンのために交通費を何千円とかけて丸1日つぶす、それだけでも楽しくてたまらない思い出となった時代でもあったのです。
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(あの時のエアストーンは今も現役) |
店舗巡りをしよう!
さて、近年の通販の発展は目を見張るものがあり、アクアリウムを継続して行く上では、もはやなくてはならないものです。ここまでの利便性を享受してしまっては、20年前のあの時代にはもう戻れないでしょう。
ですが、大都市を訪れてワクワクしながらショップを巡り、「憧れ」を探し求める、あの時間と手間ばかりかかった求め方は、ある種の楽しみであったのも事実です。そして、残念ながら通販はこの点において、実店舗の足元にも及びません。
アナログかもしれませんが、これからのGWや夏休みにショップ巡りをするのも、一回りして逆に新しい楽しみ方なのかもしれません。通販では得られない新しい出会いがきっとあるはずです。
というわけで、今回はここまで。
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